法律相談・相続編

2000年07月09日

福井啓介法律事務所 福井 慶介

財産ドック7月度セミナーを7月9日(日)に開催いたしました。
今回は福井啓介法律事務所の弁護士、福井啓介先生をお招きして「法律相談・相続編」というテーマで相続の承継及び放棄、遺言、遺留分、養子縁組等について講演していただきました。

 相続に関して争いとなれば、家庭裁判所に調停の申立をすることとなります。相続の紛争では当事者の言い分がそれぞれ複雑で、どうしても時間がかかります。裁判所では当事者の片方と調停委員が、交代で言い分を聞き、調停委員が妥協点をまとめ、双方が合意するように調停します。紛争の8割ぐらいは調停にて解決しますが、解決しない場合には裁判所の審判を受けることとなります。
 法律的には相続発生(被相続人が亡くなられた)の瞬間に相続財産は相続人のものとなります。相続財産の分割を協議する期限は特に定められてはいませんが、紛争にならないためには早い方がよいでしょう。
 被相続人の生死がわからない場合には失踪宣告を申立、7年後に死亡宣告がなされます。相続人の中の誰かが行方のわからない場合には、財産管理人を選定し分割協議を行うこともできます。また、従来の禁治産者制度が変更となり新しく成年後見制度ができました。

相続財産の分割割合について

  • 配偶者と子1人の場合には・・・配偶者1/2 子1/2
  • 配偶者と子2人の場合には・・・配偶者1/2 子1/4 子1/4
  • 配偶者と親の場合には・・・配偶者2/3 親1/3
  • 配偶者と兄弟の場合には・・・配偶者3/4 兄弟1/4

 内縁の妻には原則としては相続分はありません。ただし、死亡退職金、年金の受取りや賃借権の相続などは認められております。
 養子に対しては養親と実親の2重の相続権を受けることとなります。本当の子でない者を実子として届けても、原則としては相続権はありません。しかし、裁判所としては争いがあり、養子と同様にみなすべきだとか、一度届を出しているのだからとか、最近は簡単にDNA鑑定ができ実子とそうでない区別がつくので、紛争となるようです。

代襲相続について

 直系親族は親―子―孫―曾孫―と代襲しますが、傍系親族は兄弟―甥姪までとなります。養子の場合には、養子縁組後の子(孫)は代襲相続しますが、養子縁組前の子(孫)は代襲相続できません。

相続人の廃除について

 不良息子や浪費癖があったりする相続人の一人を廃除したい場合には、家庭裁判所の決定を申立てる必要があります。遺言書の中での廃除は現実的には難しいので生前中に裁判所の決定をもらっておく方がよいでしょう。
 また遺留分の放棄も同様、生前に家庭裁判所への申立て決定が必要となり、当事者の真意を確認し決定されます。
 相続財産には不動産、動産、賃借権、現金、預貯金、特許権等がありますが、債務等のマイナスの財産も含まれます。プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には、相続放棄という手続きがあります。相続発生を知った時より3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。何も相続財産を貰わないからと言っても相続放棄したことにはなりません。ただし、預金を引き出したり、土地を売却したり等、相続財産の処分行為をした場合には、相続放棄は認められません。

相続財産の分割方法について

 不動産が相続人数分あれば個々の相続ができますが、1つしかない場合には、現金化して3分割したり、1人が相続し他者に現金で支払う等、現実には様々な方法がとられますが、その時の相続人の状態や、相続財産に合わせ分割する必要があり、常に相続分とはならずに具体的には難しい作業となります。また相続人の兄弟だけでなく嫁が協議に関与したり、兄弟間の力関係などにより分割協議は複雑となります。
 生命保険は受取人が被相続人なら相続財産となりますが、受取人が長男等固有の相続人の場合には判断が分かれ、相続当時の解約返戻金相当額を相続財産とみなすという考え方があります。死亡退職金も同様、受取人の財産となりますが、一部を相続財産とみなすという折衷案があります。
 葬式代は相続財産から控除されますが、香典が多い場合には、相続財産と考えられます。
 お骨の分割での紛争もたまにありますが、法的には解決がなく非常に難しい事案です。

 以上でいったん講演が終了し、休憩の後、質問会となりました。

Q. 相続人がいないのですが、看護してもらった人に相続したい。
A. 特別縁故の申立をすればよい。療養看護に努めたり財産の維持管理をしていた場合には、特別縁故者として家庭裁判所が認めてくれる。

Q. 夫婦と子供の共有名義の財産があるのですが?
A. 「私が死亡時にはA土地及びB土地の共有持分を妻(夫)に与える。妻(夫)が先に死亡している場合には、A土地の共有持分を長男に、B土地の共有持分を長女に与える。」というように具体的に2段がまえの遺言書を作成しておくとよい。また遺言書は公正証書遺言がよい。相続発生後すぐに登記など執行でき、正本は公証人役場に100年間保管されるので安全である。ただし費用がかかる。自筆証書遺言だと簡単に作成できるが、執行には家庭裁判所での手続が必要で、紛失や様式にミスがあれば効力がなくなったり、不正があったりする場合がある。

Q. 遺留分の放棄について
A. 相続人の廃除や遺留分の放棄は、相続人の中の一人が、多額の借金をしていたり、浪費癖が直らない等で何度注意しても立ち直れず他の相続人に影響を及ぼし、この際に縁を切りたい場合に使用する。相続分又は遺留分より少ない額を、その時に与える事を条件に裁判所に承認してもらう。

Q. 相続人が兄弟姉妹のみの場合には?
A. 相続人が兄弟姉妹だけの場合には遺留分はないので、遺言書を作成しておけば、その通りに相続させることができる。

 今回は「法律相談 相続編」をテーマに福井弁護士には具体的な内容にてわかり易く講演していただき、日ごろ法律は難しいと思われる方も、身近な話題として相続を見直す機会になったかと思います。財産ドックでは個別相談も受け付けております。相続に限らず様々な法律相談ができますので、(株)京都ライフの担当までお申し込みください。今後も財産ドックをご利用いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

株式会社 京都ライフ 企画管理部北営業所

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