高齢者の財産管理
2000年04月16日
司法書士服部直幸事務所 服部 直幸
1.成年後見制度とは
判断能力が不十分な者が、契約等の法律行為を行う際に、適切な意思決定をするために、成年後見人等の援助を受ける。
成年後見制度という言葉はお耳にされたことがあるとは思いますが。元々あった制度を改正、若干の新設が行われました。
健康に過ごしているわれわれがたちまち必要になるものではないのですが。「転ばぬ先の杖」といいますか、そういう部分として知っておいて頂けたらと思います。
売買、贈与等の行為で重要なのは契約書を作成することではなくて、契約する人の本当の意思に基づいて締結したからこそ守られるべきものです。
我々司法書士が関与するのは不動産の売買といっても取引の決済の場面から登場することがほとんどです。そういう不動産取引において、最近言い古されましたが(人)(物)(意志)の確認です。人―はその人が当事者本人に間違いが無いかどうか。物―は契約対象物件に間違いが無いかどうか。意志―は契約対象物件に対して、売買でしたら本当に買う意思があるのか売る意思があるのか等の要素を確認したうえで書類を確認して決済して頂いて結構です、となります。書類があるから決済しましょうではなく、あくまでも意思を確認させて頂いて書類は結果のようなものです。ただ実際仕事をしていて困る場面に遭遇することがあるのは意思の確認のところで、本当にこの人は自分で判断して契約する能力があるのか?そこの見極めが難しいです。意思能力の無い行為は無効なわけです。いちいち意思能力の有無・有効無効を判断していては取引の安全を害するということで、民法上ではそういう能力の弱い人を未成年者・禁治産者(3月31日迄)・準禁治産者(3月31日迄)そういう類型を上げて自分の判断で法律行為を出来ない人、と位置付けて保護を与えてきました。(本人の保護と、取引の安全の為 。)
この制度にも不都合な点があり数年前から民法の改正が検討されていて今回の成年後見制度という新しい制度ができるはこびとなりました。未成年者については法定代理人・親権者がおりますのでここでは対象外です。
改正前と改正後と言う事で右下の表をご覧ください。
後見制度で法定後見制度と任意後見制度―当事者の意思にもとずくもの―がありますが改正前は任意後見制度というものは無く以前は通常の委任契約でした。
改正後の法定後見制度は禁治産―後見・準禁治産―補佐・補助が新しくでき配偶者法定後見人制度が廃止されました。それぞれに表の右端にある保護者がつきます。
改正前は当事者間で委任契約を結び委任するしかなかったのが、公的機関の監督を伴った任意後見制度が新しく新設されました。
2.従来の禁治産・準禁治産の問題点
- 要件が重く厳格であり、軽度の痴呆・知的障害・精神障害等の場合には利用できない。
- 名称ゆえ社会偏見が強い。
- 戸籍に記載される。
- 宣告のため医師の鑑定に要する費用、期間の問題。
上記の問題点を改正して新しい成年後見制度ができたのですが、そこで今までの制度は本人の保護とうたっていましたが実際には本人の家族の為に利用されており、本人の為に宣告が必要であっても1.2.3.4.があるので家族が躊躇して手続きを取らないのが通常でありました。
3.新しい成年後見制度
新しい制度では「自己決定の尊重」と「本人の保護」の調和を図るという理念で成り立っています。
(1)法定後見制度
- 補助(新設)
- 補佐(準禁治産の改正)
- 後見(禁治産の改正)
- 配偶者法定後見人制度の廃止
- 複数成年後見人制度の導入
- 監督体制の充実
(2)任意後見制度
公的機関の監督を伴う任意代理制度。
本人があらかじめ代理人(任意後見人)に、自己の判断能力が不十分になった場合の財産管理、身上監護の事務について代理権を与える「任意後見契約」を公正証書で締結。
(3)戸籍に代わる新たな登記制度
- 成年後見人などの権限や任意後見契約の内容(どのような法律行為について代理権・同意権・取消権が付与されているか)を公示し、取引の安全を図る。
- 東京法務局後見登録課で事務取扱い
- 登記事項証明書
財産の売買・介護サービス提供契約締結時に成年後見人の権限確認
自己が登記されていないことの証明書の交付請求も可
(4)社団法人成年後見センターリーガルサポートについて
我々司法書士のPRになりますが後見人の候補者として名簿を作り家庭裁判所に出しております。司法書士にしても弁護士にしてもあくまでも専門性を発揮できるのは主として財産管理の部分に限られ、本人の身上監護については別の福祉の専門家等が後見人になることが予測されます。そこが複数成年後見人制度の導入につながります。
以上の内容が平成12年4月1日から施行されています。
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