確定申告の事前準備ポイント

2000年02月13日

長谷川会計事務所 小林 良一

I. 平成11年度税制改正(所得税関係)

(1) 最高税率の引き下げ

居住者又は非居住者の平成11年以後の各年分の所得税の最高税率が表1の様に引き下げられました。

個人住民税についても、平成11年度分以後表2の様に引き下げが行われました。
* 最高税率の人は、所得税13%・住民税2%の減税で合計15%の引き下げとなります。

(2) 定率減税の実施(平成10年度までは定額であった)

平成11年以後の各年分の所得税について、その年分の所得税額からその所得税額の一定割合相当額を控除する定率減税を実施することとされました。

  • 所得税・・・所得税額の20%相当額(最高25万円)
  • 住民税・・・所得割額の15%相当額(最高4万円)

*いずれか小さい方。

(3) 扶養親族に係る控除額(所得控除額)

平成11年以後の各年分の所得税について、一定の扶養親族にかかる扶養控除の額が、増額されました。

  • 年少扶養親族(年齢16歳未満) 一人当たり 48万円(改正前 38万円)
  • 特定扶養親族(年齢16歳以上23歳未満) 一人当たり 63万円(改正前 58万円)
    *平成11年12月31日現在。12年度以降は元に戻る動き

(4) 住宅ローン減税(税額控除)

従来からの住宅ローン減税(住宅取得等特別控除制度)について、平成11年1月1日から平成12年12月31日までの居住開始に限り、多岐にわたる改正が行われました。
(次ページ表参照)

II.不動産所得の申告に係る留意事項

1.不動産所得の金額の計算

不動産所得の金額は、次の算式によって計算します。

総収入金額-必要経費=不動産所得の金額

2.総収入金額

総収入金額に含めるべき収入の種類と、その収入時期は以下の通りです。

(1) 家賃
 1月1日から12月31日までの収入の確定した金額によって計算します。但し、契約その他慣習などによって賃貸料の支払日などが定められている場合には、その定められた支払いの期日に計上することになります。
*10月から賃貸した場合(前家賃)=原則4ヶ月分。例外3ヶ月分(翌年等継続的な場合)
又、不動産の賃貸借契約に関し借主が家賃などを供託している場合の収入時期は次の様になります。

  • 賃貸借契約の存否が争いの原因
    ・・・その係争が解決した日
  • 賃貸料の値上げ等が争いの原因
    ・・・賃貸料相当額として供託された金額については、その年分の収入。その後確定した部分はその確定した年分の収入金額に算入。

(2) 礼金

(3) 更新料

(4) 敷金・保証金
不動産賃貸の際に収受する敷金などは、原則として明け渡す時に借主に返還するものなので、その預かった年分の収入金額には算入されません。
しかし、敷金などの一部について返金しない部分に相当する金額は、その返還しないことが確定した年分の収入金額に算入しなければなりません。

(5) 名義書換料

(6) 共益費
収入・経費共に申告をする。

(7) 入居者から預かった水道光熱費
収入として申告をし、支払ったものを経費計上。
*(4)での例:解約引きで1年以内退去(20%引き).2年以内退去(15%引き).2年以上(10%引き)の場合、初年度10%分・2年目5%分・3年目5%分を申告する

3.必要経費

必要経費は現実に支払った金額ではなく、その年において支払うべき債務の確定した金額によって計算します。

(1) 租税公課
印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税・事業税等(所得・住民税は駄目)

(2) 損害保険料(火災保険等)
銀行借入によりアパートを建築した場合、火災保険料は借入期間分の保険を一括加入した場合、支払った保険料を月割り按分した金額が経費になる。

(3) 修繕費
修繕費は必要経費に算入されるが、資本的支出となるものは修繕費の金額から除かれ、一旦資産計上した上で減価償却により経費とする。

  • 資本的支出...固定資産に手を加えたことによる支出が通常の管理又は修理の程度を超え、それによって資産の価値を高めたり、使用可能年数が延長したりする性格を有するもの(建物の避難階段の取付等、物理的に付加された部分に対する金額・用途変更の為の模様替え、取替等に要した金額)
  • 修繕費...その支出が資本的支出に該当するものであっても、一の修理・改良等の費用が20万円未満のもの。又、その費用が過去の実績その他の事情により、3年以内の周期で行われるもの。
  • 1. に該当する部分を除き、一の修理・改良等の為に要した金額のうちに資本的支出であるか修繕費であ

(4) 減価償却費下記のフローチャート図にてまとめました。

  • 償却方法
    (ア) 償却方法
     平成10年4月1日以後取得した建物・・・定額法のみ
  • 少額の原価償却資産・・・使用可能期間が1年未満・取得価額が10万円未満の資産購入費用は全額必要経費。
    (イ)少額の原価償却資産・・・使用可能期間が1年未満・取得価額が10万円未満の資産購入費用は全額必要経費。
  • 一括償却資産・・・取得価額が20万円未満の資産(上記2. の適用を受けたもの及び国外リース資産を除く)については、3年間で均等に必要経費に算入。

(5) 借入金利子
マンション購入の借入金に係る利子については、賃貸借開始前に発生したものはマンションの取得費となり。開始後の利子のみが必要経費となる。又、不動産所得の金額の経常損失が生じた場合、その損失の金額のうち土地等を取得する為に要した借入金の利子の額に対する部分の金額は損益通算することは出来ない。
*自己資金があれば、土地購入の資金とした方が良い。

(6) 管理費

(7) 水道光熱費

(8) 立退料
入居者等を立ち退かせる為の費用(但し、建物を譲渡する場合や建物を取り壊して敷地を譲渡する場合の立退料は、譲渡所得の計算上差引くことになる)

(9) 専従者給与(事業的規模の場合=5棟10室)

  • 青色申告者の場合...仕事の内容や従事の程度、他の使用人の給与の額等から見て、通常相当と認められる適正な金額として、予め届けた金額の範囲以内。
  • 白色申告者の場合...配偶者:86万円、配偶者以外:50万円。

*専従者給与を支払うにあたり留意すべき点は、その専従者給与を受けた規模はその金額の多少に関わらず、扶養親族には該当しなくなることです。よって、扶養控除の対象者とはならない。

4.損益通算

不動産所得の金額の計算上生じた損失(赤字)は、一定の順序により他の各種所得の金額(黒字)から控除することが出来ます。これを損益通算といいます。但し、その損失のうち土地等を取得する為に要した負債の利子の額がある時は、その損失の金額のうちその利子の額に相当する部分の金額は損益通算の対象とはなりません。

5.その他所得控除に係る留意事項

(1) 医療費控除
自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の為に医療費を支払った場合は、次の算式によって計算した金額を所得から差引くことが出来る。
(平成11年中に支払った医療費の総額―保険金等で補填される金額)―(10万円と平成11年分の総所得金額等の合計額の5%相当額とのいずれか少ない方の金額)=医療費控除額
*但し、計算式によって計算した金額が200万円より多くなる場合は、200万円が限度。

☆ 医療費控除の対象となるもの

  • 病気や身体障害のリハビリの為、医者にかかった費用。
  • 病気再発の危険性があり主治医に定期的に検査してもらう為の診察料。
  • 病気やケガの治療の為に薬局で買った薬代。
  • 医師の処方箋に従い薬局で購入した漢方薬の代金。
  • 子供が小さい為に親が付き添って通院した場合の親の交通費。

 など

☆ 医療費控除の対象とならないもの

  • 治療を目的としない健康診断や人間ドックの費用。
  • しみ.しわを取るなどの美容整形の手術代。
  • 海外旅行前に受けた予防接種の費用。
  • 通院に自家用車を使った場合のガソリン代、駐車料金。
  • 風邪の予防の為に買ったうがい薬。
  • 健康増進の為に買ったビタミン剤や漢方薬の代金。
  • 健康管理の為の血圧計を購入した代金。

 など

(2) 扶養控除
平成11年度の税制改正により、16歳未満の年少扶養親族に付1人あたり48万円、16歳以上23歳未満の特定扶養親族に付1人あたり63万円の所得控除が認められます。

以上、今回の長谷川公認会計事務所・小林先生のセミナー内容をお伝えさせて頂きました。平成11年度税制改正では高所得者向け減税と期限付きとはいいながら至れり尽くせりの住宅ローン減税であったのではないでしょうか。そして、不動産所得の申告に係る留意点としては、項目毎に収入と経費の取扱い方を詳しくご説明頂きました。又、マンション建築する場合は建てる前にお金の使い方を考え、様々な控除を使う場合は他の控除との関連等を考えて使うことなど、具体的なとても内容のあるセミナーであったと思います。会員の皆様におかれましては、是非とも今日のセミナーをご活用頂き今後のマンション経営のお役にたてて頂ければ幸いです。

株式会社 京都ライフ 京都駅前店

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