消費者契約法について

2001年07月08日

福井啓介法律事務所 福井 啓介

今回は今年4月に施行された「消費者契約法について」というテーマにて福井啓介法律事務所の弁護士福井啓介先生に講演していただきました。施行後初めての講演ということもあり多数の会員様にご参加頂くなか、消費者契約法の概要や事例による解説を中心に行なわせていただきました。

■消費者契約法とは

平成13年4月1日以後に、「消費者」と「事業者」との間で締結される契約(消費者契約)が一般に適用されます。「消費者」とは、「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」でない個人をいい、「事業者」とは、「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」をいいます。売買契約やサービス提供契約だけでなく、賃貸借契約、金銭消費貸借契約、保証契約などにも適用されます。商品による制限もありません。ただし、消費者契約の中で労働契約だけには適用されません。

■消費者取消権の概要

・誤認類型と困惑類型
消費者契約法4条は、意思表示を取り消すことができる場合として、1.事業者の情報提供方法・内容が不適切であったがゆえに(1.不実告知、2.断定的判断の提供、3.不利益事実の不告知)消費者が誤認した場合の誤認類型と、2.事業者の勧誘態様が不適切であったがゆえに(1.不退去、2.監禁)消費者が困惑した場合の困惑類型という2つの類型を挙げています。誤認類型のうち不実告知と不利益事実の不告知の2つの場合には、「重要事項」にかかわるものでなければならないという要件があります。

・重要事項について
重要性の程度としては、不実告知、不利益事実の不告知という各行為の対象となる事項の重要性については、「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」でなければなりません。これは要するに、消費者が事業者から契約締結の勧誘を受けるにあたって、当該事業者から、不実の告知がなされなければ、あるいはあらかじめ不利益な事実が告知されていれば、前記のような一般的、平均的な消費者の立場にたってもそのような消費者契約は締結しなかったであろうと評価できる場合を意味します。

・消費者契約の取消し
誤認類型、困惑類型のいずれにおいても、各類型ごとに定められた各要件を具備していれば、当該消費者契約を取り消すことができます。契約の申込みまたはその承諾の意思表示が取り消された場合には、初めから無効であったことになるほか、その取消権の行使方法、効果等は、本法に別段の定めがない限り、取消しに関する民法の規定によります。

・善意の第三者の保護
 消費者取消権の行使による遡及的無効という効果が及ぶ範囲を広げすぎると、事情を知らない第三者らが不測の損害を被るなど、取引の安全を損なうことがあるため、取消しという効果を及ぼすにふさわしい範囲について規定することが必要となります。そこで、本法は民法96条3項の規定と同様、消費者取消権の行使による遡及的無効という効果は、これをもって善意の第三者に対抗することはできないものとし、これにより取引安全の保護の要請に応えたのです。
 具体例として、消費者が事業者に対して、ある物(動産、不動産など)を売り、当該事業者がこれを買い受けた場合(売買契約が締結された場合)で、さらに、数日後に当該事業者がその物を事情を知らない第三者に転売した場合、当該消費者が、事業者による不当な勧誘(不退去など)によって困惑して契約を締結させられたことを理由として当該消費者契約(売買契約)を取り消した時でも、当該消費者としては、事情を知らずに当該物を新たに買った第三者に対しては、自己が契約を取り消したこと及びその効果を主張することはできず、当該物の返還を請求することができないのです。このようにして、事情を知らずに新たに取引関係に入った善意の第三者の立場、ひいては取引の安全が確保されるのです。
 ところで、当該消費者は、当該事業者に対して、取消しの効果を主張できるので、当該事業者は当該消費者に対し、原物変換に代えて金銭で返還する義務を負い(市場性のある有価証券等代替物による返還が可能なものについては、同種同量のものを調達した上で返還する。)、他方で、当該消費者は当該事業者に対して、売買代金としての受領した金銭を返還する義務を負うことになります。

・取消権の行使期間
民法126条では、取消権の行使期間を、「追認を為すことを得る時より五年間」、「行為の時より二十年」と定めています。これに対し、消費者契約法では、消費者が誤認又は困惑したことにより、消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示を行なった場合の契約の取消権について、その行使期間を、「追認をすることができる時から六箇月間」、「当該消費者契約の締結の時から五年」とそれぞれ民法の規定に比べ、短縮されています。消費者契約においては、契約当事者の一方は必ず事業者であり、事業者の行う取引は、反復継続性という性質をもつため、迅速な処理が求められ、かつ取引の安全確保、早期の安定化に対する要請が高いと考えられることから、その取消権の行使期間を民法の規定に比べ短縮されているのです。このように、行使期間の関係で、消費者契約法4条の取消権よりも民法の取消権の方が有利な場合があるわけですが、そのような場合には民法の取消権が使えることに注意すべきです。

■消費者契約の条項の無効(不当条項の無効)

  • 事業者の債務不履行責任、不法行為責任、瑕疵担保責任を全て免除する条項(濃い重過失による各責任については、一部免除の条項も無効)
  • 消費者が支払う損害賠償の予定条項につき、平均的損害額を超える部分
  • 消費者が支払期日経過後負担する違約金条項につき、年14.6%を超える部分
  • 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」

施行後期間が浅い為、断定的なことはいえませんが、マンションの賃貸借契約に関しては、入居後のトラブルを回避する為に、予測されることを特約等で契約条項(原状復帰項目等)に盛り込んでいるケースがありますが、それが契約無効につながる事も予想できます。今後期間が経過する中、いろんな判例も出てくると思いますので、積極的に情報提供を心がけていきたいと思います。

財産ドック 株式会社 事務局

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