定期借地契約と定期借家契約の利用方法について

2002年07月13日

福井啓介法律事務所 福井 啓介

7月度の財産ドックセミナーは、講師に福井啓介法律事務所・弁護士福井啓介先生を迎え、「定期借地契約と定期借家契約の利用方法について」というテーマに基づき、平成3年、11年の借地借家法改正を中心に講演していただきました。

I. 旧法と新法

 土地の借地契約をすると堅固建物か非堅固建物かにより契約期間が分かれて決まっており木造であれば30年、鉄筋やレンガ造りは60年、また期間の規定がない場合は当初の契約通りであった。更新期間の規定がない場合は自動更新になり、特別な期間の規定がなく土地を貸す場合は60年間、また木造建築の場合は30年間は返らないという様な仕組みになっていた。期間の規定がある場合でも最低期間は拘束され、その期間内の明渡しは有り得なく、土地の明渡しを求める場合30年や60年または更新期間のサイクルに合った時でないと聞き入れられない。また、事前にその旨を意思表示する必要があり、その場合でも何故その土地が必要かといった様な家主側に明確な理由が必須条件という制度であった。
 しかし現実問題、30年も経てば建物の老朽化が進み、建直しを考える現代社会では長期に渡り土地を借りる事より手軽に低価格で借りたいという事の方が重視される様になった。したがって従来の仕組みには合わず、また土地の有効性を失いがちであるため、以前は借地法、借家法、建物保護法と分かれていたが平成3年、11年に改正・統合され、借地・借家法となった。
 契約は本来、当事者間で自由に行われる事であり、「正当な理由がなければ明渡せない」といった様な事は法律の世界でも特殊である。昭和16年に正当事由が規定されたが、その理由として当時は戦時中であり国家総動員となる為、国民の住居を安定させる必要があった。しかし現代社会において契約自由の原則に従い、借地・借家法も見直す必要性が出てきた。よって平成3年の改正では

  • 一般定期借地権(普通借地権)
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 事業用借地権

の定期借地権が設けられ、平成11年の改正では定期借家制度を導入し不在期間の建物賃貸借が廃止された。

 旧法では地主が自ら土地を使用する事を必要とする場合、またその他正当な事由がある場合とだけ定められていたが、新法では「主たる判断基準」と「従たる判断基準」に分かれる。まず「主たる判断基準」としては

  • 地主が土地の使用を必要とする事情
  • 借地人が土地の使用を必要とする事情

と規定された。次に「従たる判断基準」としては

  • 借地に関する従前の経過
  • 土地の利用状況
  • 地主が土地の明渡しの条件として、または土地の明渡しと引換えに借地人に対し財産上の給付をする申出をした場合におけるその申出

となった。

 公平な契約を結ぶ為に色々なモデル案が出され、旧法では堅固か非堅固で期間が分かれていたが新法ではそもそも堅固か非堅固の判断が難しい為、それをなくし期間の規定がない場合は30年、ある場合でも30年以上と定められた。また、期間の規定がない場合の初めての更新は20年、二回目以降は10年に改正された。こうして新法と旧法が出来た事により、旧法で契約した借地権は新法ではどうなるのか?といった疑問が出てきた。旧法で成立した契約は旧法が適用され、新法は適用されないが変更する事は出来る。その方法として一度、契約を合意解除し新たに新法に基づき契約する事が出来る様になった。

II. 契約期間中のトラブル

 借地人が賃料不払いの場合、借地契約を解除する事が出来る。その際、入居者が居ても立退かなければならない。
 また無断に増改築した場合は、基本的に借地人の自由であり明渡しを要求する事は出来ない。しかし契約時に特約がある場合は認められるが借地人が裁判所に判断を委ね地主の代わりに許可を得る事もできる。
 旧法では契約期間中に建物が滅失した場合、地主が異議を申立てても明渡しは難しかった。新法でも当初の契約期間中に建物が滅失した場合はそれほど旧法と変わりないが、更新後の期間の滅失は家主の承諾を得ずには再建出来ないという様に改正された。しかしこの場合でも裁判所から家主に代わる許可を得る可能性はある。

 以上、簡単ではありますが7月度のセミナーレポートとさせていただきます。
 今回のセミナーについて、より詳しく知りたいオーナー様は財産ドック株式会社の運営委員までお気軽にお問い合わせください。今後もオーナー様のお役に立てる情報が提供できるセミナーを予定しておりますので、ぜひご参加ください。

株式会社 京都ライフ 西院店

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