平成15年度税制改正

2003年02月15日

山本和義税理士事務所 山本 和義

 平成15年度税制改正大綱による税制改正は、デフレ不況下で税収不足に苦しむ財政であっても国民の現在と将来不安を最小限に抑え、安心できる公共サービスを提供できる事、将来の財政の健全性を維持しつつ新たな飛躍に応え得る財政体質を目指す事を重視して制度改正に臨んだとしています。

I.相続時精算課税制度(仮称)の創設

 相続税及び贈与税に関する改正の目玉として、相続時精算課税制度が創設されます。

1. 制度の目的

 相続税を取り巻く環境(経済のストック化の進展、社会保障の充実、高齢化の進展)が大きく変わってきていることから、生前贈与を円滑に行うために設けられました。高齢化の進展に伴なって、相続による次世代への資産移転の時期が広範にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対する中立性を確保する事が重要になってきています。高齢者の保有する資産を生前贈与することにより早い時期に次世代に移転し、資産を有効利用することにより経済社会の活性化へつながるといった点が期待されます。

2. 制度の内容

 生前贈与については、受贈者の選択により(新制度を利用してもしなくてもよい)贈与時に贈与税を支払い、その後の相続時に贈与財産と相続財産を合計した価格を基に計算した相続税額から、既に支払った「贈与税」を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税をする事ができることとする措置を講ずることにしました。
 新たに創設される贈与税は、平成15年1月1日以降の相続分から適用されることとなっており、贈与財産の価格の合計額から、複数年にわたり利用できる2,500万円(非課税枠)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出することとされています。

3. 適用の要件

 本制度の適用対象となる贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む。)とされています。年齢の判定は、贈与者及び受贈者共、贈与を受ける年の1月1日で行うこととされています。
【設例】
父(80歳)から以下の親族に贈与する場合、相続時精算課税の贈与を受けることができるのは誰ですか?
1.親族の構成
長男(55歳)・長男の子A(父と養子縁組をしていて25歳)・長男の子B(21歳)・次男(死亡)・次男の妻(45歳)・次男の子C(22歳)・次男の子D(18歳)
2.相続時精算課税の贈与を受けることができる者
長男・長男の子A及び次男の代襲相続人である次男の子Cとなります。長男の子Aは養子縁組により父の子となることから当該贈与を受けることができると思われます。
3.相続時精算課税の贈与を受けることができない者
次男の妻及び長男の子Bは、年齢要件については満たしていますが、子に該当しません。また、代襲相続人である次男の子Dは年齢要件を満たしていません。

4. 適用手続き

 所轄税務署長に対してその旨の届出を贈与税の申告書に添付することにより行うものとされています。
 本制度の選択を行おうとする受贈者(子)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に所轄税務署長に対してその旨の届出を贈与税の申告書に添付することにより行うものとしています。

5. 制度利用の選択

 受贈者ごと、贈与者ごとに選択することができます。
 この選択は、受贈者である兄弟姉妹が各々、贈与者である父、母ごとに選択できるものとし、最初の贈与の際の届出により相続時まで本制度は継続して適用されます。
 そのため、父からの贈与は相続時精算課税制度による贈与を選択し、母からの贈与は現行制度の贈与とすることは可能です。また、父母からの贈与をもとに相続時精算課税制度の贈与を選択すればそれぞれ2,500万円(住宅取得資金の贈与の場合、3,500万円)、最大5,000万円(住宅取得資金の贈与の場合、7,000万円)まで非課税で生前に贈与を受けることができます。

6. 留意点

 この制度において留意すべき点は、贈与時点では贈与税は課されませんが、相続時には相続財産と過去の贈与財産を加算した金額に対して、相続税が課されるという点です。したがって、無税で移転できるというわけではなく、税金の支払を先延ばししてもらっているに過ぎません。
 また、相続時精算課税制度の贈与を一度選択すると生涯継続して適用されることとなり、現行制度の年110万円の基礎控除を受けることはできなくなります。さらに、被相続人の相続開始前3年を超える贈与については、生前贈与加算の対象となりませんが、相続時精算課税においては贈与の時期が3年を超えていても相続財産に加算されることとなります。
 その結果、相続財産に贈与財産を加算した金額が相続税の基礎控除額以下になることが予想される方にとっては、結果的に税負担なく相当額の財産を生前に移転できることになりますが、将来、確実に相続税が課されることが予想される高額資産家にとっては、この制度を適用するメリットは、あまり大きくないと言えるでしょう。

7. 計算方法

 贈与税は、非課税枠を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出し、相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して課税することとしています。
  1. 贈与税額の計算
本制度の選択をした受贈者(子)は、本制度に係る贈与者(親)からの贈与財産について贈与時に申告を行い、他の贈与財産と区分して、その贈与者からの贈与財産の価額の合計額を基に計算した「贈与税」を支払うものとしました。その「贈与税」の額は、選択をした年以後については基礎控除110万円を控除せず、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる非課税枠2,500万円(特別控除)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。

{贈与財産の価額-2,500万円 (非課税枠)}×20%=贈与税額

2. 相続税額の計算
本制度の選択をした受贈者(子)は、本制度に係る贈与者(親)からの相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して現行と同様の課税方式(法定相続分による遺産取得課税方式)により計算した相続税額から、既に支払った「贈与税」相当額を控除することとしています。その際、相続税額から控除しきれない場合には、「贈与税」相当額の還付を受けることができます。なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は贈与時の時価とされます。

II. 住宅取得資金等に係る相続時精算課税制度の特例の創設

 自己の居住の用に供する一定の家屋(新築又は築後経過年数が20年以内・耐火建築物は25年以内で床面積が50m2以上であること)を取得する資金又は、一定の増改築(工事費用が100万円以上であることと、工事後の床面積が50m2であること)をするための資金の贈与を受ける場合に限り、65歳未満の親からの贈与についても適用することとし、2,500万円の非課税に1,000万円を上乗せし、非課税枠を3,500万円とすることとされました。
 この特例は、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に贈与により取得した住宅資金等について適用されます。現行の住宅資金贈与の特例(5分5乗方式...550万円まで非課税、1,500万円まで軽減)については、平成17年12月31日まで経過措置として存置されます。
 但し、平成15年1月以降に現行特例を利用するとその年を含めて5年間は相続時精算課税制度への移行が出来なくなりますので注意が必要です。

株式会社 京都ライフ 企画管理部南営業所

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