マンション賃貸借と消費者契約法

2003年11月15日

福井啓介法律事務所 上田 敦

 平成15年11月15日、弁護士 上田 敦 氏(福井啓介法律事務所)による「マンション賃貸借と消費者契約法」について、~おたくの契約書、大丈夫?~と題し、セミナーが開かれました。
 昨今、敷金返還・原状回復費用の負担をめぐるトラブルが多発していることもあり、ご参加頂きましたオーナー様、弊社社員共々熱心に聞き入っておられる姿が非常に印象的なセミナーでした。
 又、セミナーの内容の方も具体的な事例を挙げてのご説明、参考文献の御紹介、質疑応答等、オーナー様にとっても現在のマンション経営に直面している問題ですので、大変有意義なセミナーであったと思います。それでは、簡単ではございますが、セミナーの内容をレポートさせて頂きます。

1.トラブル

平成12年度の京都市市民センターに寄せられた総相談件数は、7574件。
そのうち、1位は賃貸アパート・マンションに関する相談件数で、894件になり敷金返還・原状回復費用の負担をめぐるトラブル等、契約条項に関する相談が多数を占めている。これらのトラブルと消費者契約法の観点からみて、家屋賃貸借契約条項の見直しが迫られている状況にある。

2.消費者契約法について

平成13年4月1日施行。
事業者と消費者の情報力・交渉力格差を正面から認めた初めての法律で、今後の消費者契約をめぐる法律関係や立法の方向性を示した点で画期的な法律である。
賃貸借契約については、施行以後に契約を締結したものに適用される。但し、施行後に更新した契約については、消費者契約法に沿って対処していくのが無難である。

【特徴】

  • 消費者に権利を付与した民事特別法。
  • 事業者と消費者には格差があることを明確に宣言。
  • すべての消費者契約に適用される。
  • 十分な情報提供の促進。
  • 2条以下の解釈における1条の重要性。
  • 契約条項適正化のための一般条項が規定。

3.内容

(1)情報提供努力義務

第3条1項 事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。

(2)不当勧誘に対するペナルティー・・・意志表示の取り消し【誤認型】・・・誤った情報による勧誘

1.不実告知(第4条1項1号)
重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認。

2.断定的判断の提供(第4条1項2号)
物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な条項につき断定的判断を提供すること。当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認。

3.不利益事実の不告知(第4条2項)
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、且つ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。但し、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

【困惑型】・・・困らせて契約させる。

1.不退去(第4条3項1号)
当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思表示を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

2.退去妨害(第4条3項2号)
当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

(3)不当条項に対するペナルティー・・・不当条項の無効。

1.不当な免責条項の無効(第8条)
不法行為・債務不履行・瑕疵担保責任の免責。

2.不当な損害賠償の予定の無効(第9条)
解除に伴う損害賠償の予定・遅延損害金。

3.一般条項(第10条)
民法、商法、その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

4.具体的事例

(1)マンション賃貸借契約の消費者契約法の適用
消費者(借主:場合による)と事業者(家主)との間で締結される契約・・・第2条3項に適用。
契約書には第8条以下の不当条項規定の適用あり。
仲介・媒介業務には不当勧誘規定の適用あり・・・第5条

(2)不当勧誘

1.不実告知
表示に間違いがある場合(駅までの距離、日当り、立地条件等)取り消される可能性あり。
事業者の故意、過失の必要はなし。

2.断定的判断の提供
将来的に値打ちが上がる等の金品商品

3.故意の不利益事実の不告知
故意の内容としては、消費者に不利益な事実があることのみでいいとの見解あり。
将来的に日当りが悪くなる事がわかっているのに言わなかった場合。

(3)不当条項
判断基準のポイントは、透明性(内容がわかりやすいこと)・合理性(内容が合理的、理由があること)。

 マンション経営においては事業者になるオーナー様ですが、日常生活における商慣習の中では消費者になるケースが殆どである以上、消費者の利益の擁護を図り、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する事を目的とする「消費者契約法」と今後如何に上手く付き合っていくかが課題になるのではないでしょうか。貸主と借主との間にある情報の質及び量並びに交渉力の格差をなくし契約条項等を明確にきちんと定め、借主の承諾をきちんと取れさえすれば、取れるものは取れる。又、明確な判例・事例がたくさん出れば、より良い状況になるのではないでしょうか。私共としては、貸主・借主双方にとってより良い状況で契約が遂行できるよう努力していく所存でございます。
 今後も財産ドック(株)といたしましては、オーナー様にとって身近でタイムリーな問題をさまざまな角度から分析できるようなセミナーを開いてまいります。今回ご出席頂けなかったオーナー様も是非とも次回セミナーにご参加して頂き、様々な知識をもってこの時代を勝抜いていければと願っております。

株式会社 京都ライフ 山科店

一覧に戻る

資産運用のご相談は
こちらから

財産ドック株式会社

財産ドック株式会社

〒604-8186
京都市中京区御池通烏丸東入梅屋町361-1 アーバネックス御池ビル東館3階 財産ドック事務局(京都ライフ本社内)

TEL075-256-8240

FAX075-344-4664

営業時間9:30~19:00 年中無休(盆・正月を除く)

ご相談はこちらから