マンション経営の実戦講座

2004年11月24日

平塚土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉
福井啓介法律事務所 弁護士 上田 敦
(株)アイディーユー 高瀬 直樹

平成16年11月24日、京都ロイヤルホテルにて財産ドック株式会社と(社)全国賃貸住宅経営協会京都府支部の共催で「マンション経営の実践講座」と銘打って毎年恒例となりましたセミナーとパーティを行いました。

【第一部】
土地家屋調査士と境界確定登記官
~大きく変わる! 境界紛争解決への道~

平塚土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

【第二部】
今、問われる「敷金・保証金問題」について
~これまでの判例動向、ならびに今後の展望~

福井啓介法律事務所 弁護士 上田 敦

【第三部】
不動産売却革命・本格時代突入!
~高値で売却、マザーズオークションの魅力と仕組み~

(株)アイディーユー 高瀬 直樹

【第一部】
土地家屋調査士と境界確定登記官
~大きく変わる! 境界紛争解決への道~

平塚土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

1.土地家屋調査士とは

土地家屋調査士とは、土地境界確認作業の専門職である。
所有権、抵当権、賃借権の権利の対象となる土地・建物を正確に測量、調査し、その結果を法務局に備えてある土地及び建物登記簿に反映させる業務に携わっている。従って、土地家屋調査士は土地境界に関する紛争解決の第一次的な専門家である。

2.土地の境界とは

地番界とは、行政の処分行為で発生した公法上の線の事で、不動の線と言われている。これに対して所有権界とはあくまで当事者同士の私的権利の範囲を確定するものであり、場合によっては変動する線である。また私権の保護のため対抗要件として、登記が存在している。

紛争は、地番界、所有権界、このニ種の境界の区別の曖昧性から発生すると見られる。境界確定訴訟と所有権確認訴訟の違いをきちっと把握しておかなければ、判決確定後にもう一方の訴訟を行わなければならないケースも出てくる。

境界確定の裁判とは特異な部類の形式的裁判である。膨大な資料のもと確定する要素の範囲が広く、鑑定書を差し入れて行い、裁判官、弁護士とも専門的な知識を要する事になる。その為、膨大な時間と費用がかかることになるのが現状である。

3.境界紛争解決への道

前述のとおり、現在の土地紛争解決制度は十分に機能を果たしておらず、不動産を資産として生かすための大きな阻害原因の一つでもあり経済の流動にもマイナスに影響している。

そこで今、行政のイニシアティブを強めたADR(裁判外紛争解決制度)の創設が検討されている。裁判によらず自主的に解決する道が開けてくることになる。

また、境界確定訴訟(司法)から境界確定申請(行政)へと制度が移行する事になる。
司法ではなじまない点が多いので、行政手続にて法務局の登記官が境界確定作業を行うようになっていく。これはあくまで行政処分であり、不服の場合は不服申し立てを行い、登記官に対し抗告訴訟を行う事となる。

今後はこのような制度の創設により、土地境界紛争の解決が迅速に行われていくものと思われる。


【第二部】
今、問われる「敷金・保証金問題」について
~これまでの判例動向、ならびに今後の展望~

福井啓介法律事務所 弁護士 上田 敦

敷金・保証金とは、賃借人の債務不履行による損害(賃料債務や損害賠償債務等)を担保する為に予め賃借人から賃貸人に交付され、契約終了時にその損害額を差し引いた額を無利息で賃借人に返還される金銭を意味する。

従って、これにより当然に原状回復費用を担保するものではない。

また、民法606条が賃貸人の修繕義務を想定している事、並びに賃料の意味が賃借物使用の対価を意味する事に鑑みれば、経年劣化や通常損耗の回復費用は賃貸人が負担するのが原則である。

そこで、これらの回復費用を賃借人に負担とするには特約が必要となる。
もっとも、この特約の有効性が敷金・保証金問題の中心論点となる。

まず、何が「経年劣化、通常損耗」なのかその意義についてだが、国土交通省住宅局作成の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に一応の規定があるが、これは程度により変動しうるものであり、厳密には判断が困難である。

では、この特約に対する判例の動向であるが、特約の文言に単に「原状回復」としか規定なき場合にあたっては、経年劣化、通常損耗は原状回復には含まないとする判例が続出したのである。

特約の文言に、経年劣化、通常損耗費用についても賃借人負担とする事を明記したものにあっては、その特約自体の有効性が問題となり、判例はその有効要件として、

  • 特約の必要性がありかつ具体的でないなどの客観的、合理的理由が存在する事
  • 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負う事について認識している事
  • 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしている事

が必要であるとした。

即ち、特約が有効になる要件としての賃借人への説明としてはただ単に説明すれば足りるものではなく、
1.特約各項目自体に明確性と合理性があり、2.それに基づく説明をし、3.賃借人が自己の原状回復義務につき十分に認識すること が必要になるものと解される。

ところで、近時原状回復特約そのものが消費者契約法10条に反し無効とする判決が京都地裁で出された。

この判例理論に照らせば、2.や 3. の要件の説明をしたとしても、特約自体が無効になるものとも解される。
しかし上記判決は、抽象的・不明確な条項について「消費者の利益を一方的に害するもの」として効力を否定したのであり、すなわちこれまで2.や 3. の要件を欠くとして効力を否定されたものにつき、「説明」問題の一歩手前で効力を否定したものといえる。

よって、この判決をもって裁判所が全ての原状回復特約の効力を否定したとは断定できず、特約が有効とされる余地は十分にあるものと解される。
もっとも、これらの判例の動向に照らせば、以前にも増して、特約条項の明確性、合理性が求められ、それにつき十分な説明が必要になるものといえる。


【第三部】
不動産売却革命・本格時代突入!
~高値で売却、マザーズオークションの魅力と仕組み~

(株)アイディーユー 高瀬 直樹

1.不動産オークションについて

平成11年6月に不動産オークションが解禁になり、競争原理に基づいたリアルな不動産マーケットが確立しつつある。

まず、従来の不動産取引は、1対1の相対取引で、情報の開示がなく、不透明な価格であったのに対し、
オークションを活用した不動産取引では、1対多の取引で、情報の開示と一元化により混乱が少なく、上限市場価格(業者や銀行が評価するのではなく、市場が物件の価格を決める)での最大収益が得られるようになっている。

買主は不動産購入の為の均一な機会提供があり、売主は機会損失の回避が出来、最大収益を見込めるというメリットが浮上してきた。

マザーズオークションのカテゴリーとしては、エンドユーザー向け(実需)とプロフェッショナル向け(投資)の二つのマーケットがあり、更に出展主の要望で入札方法をオープン・ビット(一般公開入札)とクローズド・ビット(限定入札)に分けオークションを企画・運営する等、個々の事案に沿った方法を行っている。

また、出展物件の種別・規模・価格に応じてオークション手法をセグメントしており、万一オークションで販売残(非落札)が発生した場合には買取保証がついている点等を含め、多くのメリットが存在する。

2.開発用地オークションについて

開発用地オークションについても入札方式となる為、相対取引に比べ高値での売却の可能性が高まる。また、売却価格の妥当性・客観性を検証できると共に、透明性の高い売却が実現できる事になる。

提携を結んでいる主要デベロッパー146社と、戸建業者77社に対して、早期かつ公平に売却する事が可能である。
この背景には、常にデベロッパーのニーズを把握し、これにあった資格者・専門家による客観的な調査・評価を実施し、この資料を公開することにより効率的な物件取得を図っている。この結果、平成14年4月からの本格開始以後100%の成約率を誇る現状である。

また、開発用地オークションでは、原則、クローズド・ビットを採用している為、取引の確実性が高まる上、契約後のトラブルを回避しやすくなるのである。

3.土地の売却をご検討であれば

相続により、物納・売却を検討するのであれば、より高値での売却を目指してこのオークションを活用してみるのも一つの方法である。
2001年度に物納された不動産は、10年で26倍に増加しており、土地を持っている方がやむなく土地を手放しているケースが増えている事を考えれば、物納する前にオークションに出展するのも一つの得策であるといえるだろう。

現に、これまで物納予定地での事例があり、物納価格の約2倍で売却出来た事例が、京都にも存在する程である。
開発用地オークションを活用して、売却機会損失を回避したり、高値売却が実現できた事例もあり、検討するのに相応しい手段であると思われる。

今後、更に会員数は増え、益々不動産取引の主要なマーケットになっていくことだろう。


以上、今回は3人の講師をお招きし非常に解りやすく講演して頂きました。

なお今回のセミナーは台風により初の延期となったにも関わらず過去最高のオーナー様に御出席頂きました。この場をお借りし厚く御礼申し上げます。

財産ドックでは今後とも実践に役立つ情報をいち早くキャッチし皆様にお伝えいたします。次回も宜しくお願い致します。

株式会社 京都ライフ 今出川店

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