土地家屋調査士から見た改正不動産登記法
2005年04月13日
平塚泉土地家屋調査士事務所 平塚 泉
電子政府構想の実現により、不動産登記もオンラインによる申請に対応することが求められ、今までの不動産登記法の改正の検討が始まりました。そしてその結果、単なるオンライン申請のための部分的な改正というに止まらず、105年ぶりに不動産登記法が抜本的に改正されることになりました。大きくは以降の点が変更になります。
1. 平成17年3月7日改正不動産登記法施行
出頭主義の廃止、保証書の廃止、強化された事前通知、資格者代理人による本人確認情報の提供の制度及び登記原因証明情報の提供の必要化については、新法の施行と同時に、すべての登記所において実施されております。
2.不動産登記申請のオンライン化(一部)
オンライン申請とは、従来書面により行っている申請をインターネットを利用して行うシステムです。オンライン申請システムを利用することにより、行政機関の窓口に出向くことなく、自宅からインターネットによる申請・届出や公文書(許可書等)の取得が可能となります。尚、従来通り申請・届出は窓口にて可能です。
オンライン申請を導入する趣旨は、国民の利便性を一層高めるためです。
多数の国民が利用する不動産登記制度について、現時点で、申請方法をオンライン申請に一本化し、書面申請を認めない制度とすることは、国民の利便性の観点から適切ではないと考えられます。
3.登記済証が新規からは登記識別情報として12行の数字その他の組み合わせになります
3月の改正法施行日以降、各法務局は順次指定を受け、指定を受けた法務局より登記のオンライン申請が可能になっています。オンライン申請が可能になると、売買登記など、新たに権利を取得される方については、登記済証(権利書)は交付されず、替わりに登記識別情報という12行の英数字のパスワードが交付されます。このパスワードは、権利を取得された方が、次回不動産を売却したり、抵当権を設定する場合に、法務局にそのパスワードを提供することによって、所有者であることを証明していくことになります。
ただし、このパスワードを他の誰かに知られてしまう=権利証を奪われるということになるので、誰にも見られぬように大切に保管しておかなければなりません。
このパスワードの保管が不安であれば、登記識別情報の不通知を申し出ることも可能となりますし、見られた可能性があれば失効させることもできます。
4.保証書制度がなくなり本人確認制度として
司法書士や土地家屋調査士及び公証人による確認代替制度が生まれた
登記識別情報の不通知・失効を申し出たり、あるいは単に紛失・失念したりして登記識別情報がない場合、又、オンライン指定前に権利証を取得した人が権利証を紛失した場合において、次に登記識別情報(権利書)を必要とする登記を申請するときには、事前通知制度を用いて郵便局等から本人確認を受けた上、法務局にその通知書を届け出て、法務局が登記の処理を進めます。
しかし、実際の不動産取引においては、このような方法では取引に支障がでることも考えられます。そこで、登記申請の代理を業とする我々土地家屋調査士が、所有者であるかの確認を行ったうえ、その情報を法務局に提供することで、事前通知をすることなく、登記申請を受理してもらう制度が、「資格者による本人確認情報の提供制度」(本人確認制度)として新設されました。
5.出頭主義の廃止
旧法の下では、権利に関する登記の申請は、当事者又はその代理人が登記所に出頭してしなければならないという出頭主義が採られていました。しかし、オンライン申請の導入に伴いこの出頭主義を廃止し、申請人等の負担軽減の観点から、書面申請についても、申請人やその代理人が登記所に出頭することなく、登記の申請をすることができることとなりました。従って、登記申請書を郵送により送付することもできます。
(郵送による場合は、書留郵便により行う必要があります)
なんといっても105年も続いていた不動産登記法の全面改正ですので、主だった部分だと思われる点について挙げさせて頂きました。また、本当に細かい部分については実務の積み重ねの中で定まっていくのかもしれません。
各役所の申請書は自宅で
・本人情報の厳格な取り扱い!
・公的認証局の必要性!
・パブリックキーとシークレットキー!
・身体特徴の情報による本人識別!
・ITのブロードバンド普及!
本来の目的であるオンラインによる申請ですが、やはり、すべての書類を電子データ化できることが条件となります(印鑑+印鑑証明書は電子署名+電子証明書による)ので、新法施行後法務局がオンライン指定となったからといってすぐに一般的になるとは思えませんが、将来的には取引の現場より申請もできてしまうということになるかもしれません。
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