相続にまつわるあれこれ・・・
2005年03月09日
福井啓介法律事務所 福井 啓介
1.相続人の範囲、相続分
(1)問題となる相続人(相続権があるか?)
- 内縁の妻・・・一般的にはありません。
- (夫の立場から)後妻の連れ子・・・養子縁組していないとだめ。
- 父に認知されていない子・・・認知してもらい、戸籍に記載が必要。
- 他人の養子になった子・・・ダブルで相続できる。逆に債務も負うことになる。
- 孫・・・子供がいない場合に代襲相続する。
- 亡き息子の嫁・・・養子縁組が必要。
- 祖父母・・・子、親、兄弟の順で誰もいない場合。
- 甥・姪・・・兄弟が死んでいる場合。
(2)相続欠格(民法891条1)
被相続人を死亡させた場合や遺言書を偽造した場合には相続人資格が剥奪されます。
(3)相続人の廃除
被相続人に対する虐待、または重大な侮辱とその他著しい非行、いずれかの行為を行なった場合、遺留分権利者(通常は子、妻、親)に対してのみ行なえる、生前の廃除申立か遺言により廃除。
(4)相続放棄と限定承認(民法915条、938条)
相続が発生すると、マイナスの財産(負債)もプラスの財産と共に相続されることになってしまいます。その際、法的な手続きで相続の放棄をすると、借金の返済義務を負わずにすみます。相続人は被相続人の死亡を知った日から3ヶ月間の熟慮期間以内に、家庭裁判所に「相続放棄」を申請します。伸長申請も可能です。 また、残された財産の範囲内で債務を弁済する「限定承認」を家庭裁判所に申請する方法もあります。相続放棄が各人に対して限定承認は全員の同意が必要です。こちらの場合も熟慮期間は3ヶ月以内になります。 また、財産の一部でも処分してしまった場合や、3ヶ月を経過すると単純承認とみなされます。
2.特別受益、寄与分
(1)特別受益
共同相続人の中で被相続人から遺贈を受けたり、または婚姻や養子縁組のため、あるいは生計の資本として生前に贈与を受けた者がいた場合には、別に相続分の前渡しを受けたものとして、その者の相続分を減らすことになっている。(民法903条1項) 結婚に際し与えた土地、お金の評価は、相続開始時点で評価のし直し、分配時に修正を加える。
(2)寄与分
共同相続人中に、被相続人の財産の維持、増加に特別の寄与(貢献)をした相続人がいる場合に、被相続人の遺産分割に際し寄与した相続人にその寄与の態様・程度に応じて他の相続人よりも多額の相続財産の取得を認める制度(民法904条の2)
1. 被相続人の事業に関する労務の提供・・・
父が農業をしていて一緒に働いていた。父が家業をしていてサラリーマンより安い給料で頑張っていたなど。
2. 財産上の給付・・・
家の改築資金を出資してあげたなど。
3. 被相続人の療養看護・・・
嫁姑の問題などもあり現実的には判断が難しいことも。
4. その他の方法
・寄与により被相続人の財産の維持・増加の効果が生じること、相続開始時にその効果が残存していることが要件。財産的な効果を伴わない単なる精神的な援助、協力、孝行にたいしては寄与は認められない。
・身分関係において通常期待されるような貢献でなく、法定相続分を修正する事由となる程の特別の寄与であることが必要。
・寄与分の算定方法
a.家事従事型
商工等の家事に従事する場合に、同種事業の平均賃金相当額を基準として寄与分が算定されます。
(被相続人死亡時の年間給与平均額)×(協力期間)―(生活相当額)の2分の1
農業の場合は一定の金額
b.金銭等出資型
提供した金額の額を基準
c.療養看護型
看護のために職業付添婦などを雇った場合に要する費用を基準
d.扶養型
扶養金額を基準
e.財産管理型
管理のために支出した金額
3.遺産の範囲
(1)銀行預金
特別の取り扱い(当然分割)
(2)現金
動産分割協議をしないといけない。
(3)賃借権
父親が借家に住んでいた場合。そこに一緒に住んでいないと相続できない。
(4)生命保険
特別受益の問題
長男を受取人に指定した場合、相続財産ではないが保険の掛け金は特別受益に相当する。
受取人を相続人と指定したとき、被相続人が指定していた受取人が先に死亡した場合、
被相続人の1.加入時 2. 死亡時、いずれの時点の相続人を受取人にするのかの判断がでてきます。
(5)死亡退職金、遺族給付金
支給規定がある場合・・・相続財産ではない。
規定のない場合・・・種々の場合がある。
こちらも特別受益になる可能性があります。
(6)祭祀財産(系譜、祭具及び墳墓)
相続財産ではない。長男が単独相続する。
(7)遺産の代襲財産
(8)遺産から生じた収益(家賃等)
一般的には不動産を得た人が相続する。
(9)金銭債務(借金)、連帯債務
- 相続放棄・・・債務が多い時
- 法定相続分に応じて当然分割継承・・・銀行預金と同じ
4.遺産の評価
(1)評価の基準時
- 相続税の計算
- 特別受益、寄与分・・・相続開始時
- 分割時期が基準
(2)評価の方法
評価の方法はあくまでも相続人間の合意によりきめますが、不動産であれば、路線価・公示価格・固定資産税評価額を参考にする。判断が難しい場合には不動産鑑定士に依頼。株式(未上場)の場合などの判断は特に難しいので税理士に依頼。
5.遺産分割手続
(1)未成年者がいる場合
・・・特別代理人の選任
(2)意思能力のない人がいる場合
(3)行方不明者がいる場合
・・・不在者の財産管理人を選任
みなさんの相続を争族にしないため、相続紛争を未然に防ぐためにも、遺産分割方法、遺言書作成の相談などは専門家に一度相談されてはいかがでしょうか。
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