マンション経営の実践講座

2006年10月17日

(株)朝日信託 北野 康弘
税理士法人FP総合研究所 税理士 山本 和義
平塚泉土地家屋調査事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

平成18年10月17日、財産ドック株式会社と、社団法人全国賃貸住宅経営協会京都府支部主催の合同セミナーを開催させて頂きました。
会場にはJPMC、ALSOK、ふろいち、京都ライフグループが展示ブースを出展させて頂き、多くの地主様やオーナー様に興味を持って見て頂いておりました。

【第一部】
オーダーメイド相続『個人信託』の活用方法
~思いどおりに相続・事業承継をのりきるための、遺言を超える新しい制度~

(株)朝日信託 北野 康弘

【第二部】
不動産管理会社を活用した相続対策のポイントと留意点
~不動産管理会社活用についての相談事例~

税理士法人FP総合研究所 税理士 山本 和義

【第三部】
土地家屋調査士から見た境界問題解決への様々な形
~不動産登記法の新しい筆界特定制度での紛争解決は...~

平塚泉土地家屋調査事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

【第一部】
オーダーメイド相続『個人信託』の活用方法
~思いどおりに相続・事業承継をのりきるための、遺言を超える新しい制度~

(株)朝日信託 北野 康弘

1.個人信託とは

財産権を受託者に引き渡し信託を設定する委託者と、信託の利益を受ける権利を持つ受益者、信託された財産を管理・処分する受託者から成る。

通常、委託者と受託者は同一であるが(自益信託)、配偶者・子ども・第三者などを受益者に設定することもできる(他益信託)。また、複数人を受益者に設定することも可能である。

受託者に財産の運用・管理の指示をするのは委託者であるが、別途に指図権者を指定し、自己の代わりに受託者に指図させることもできる。

2.個人信託の機能と、相続・事業継承での効果

個人信託には5つの特有の機能がある。

1.転換機能

  • 財産名義の転換がもたらす効果
  • 遺産分割の凍結がもたらす効果
  • 指図権者を別に選定できることの効果

2.意思凍結機能

  • 委託者の意思の将来での実現ができることの効果

3.受益者連結機能

  • 受益者を連結できることの効果

4.利益分配機能

  • 元本の受益者と収益の受益者とを分離できることの効果

5.倒産隔離機能

  • 倒産隔離ができることの効果

3.個人信託

相続・事業承継においてまず思いつくのが遺言であるが、相続人全員の同意があればそれを反故にできる や、遺産分割の禁止が5年まで、などの限界がある。

財産や事業承継にあたり、信託を利用した場合、極めて大きな効果がある。
 (1)本人が認知症になった場合、認知症になる前の意向に基づく財産の管理・運用・処分が可能。
 (2)信託は本人と信託会社との契約のため、相続人の意向に左右されない。
 (3)本人の死後30年間の財産の運用方法や承継者を本人が定めることができる。
 (4)死後30年間遺産分割を禁止することができる。
 (5)遺留分を侵害することはできないが、効果的な遺留分対策することができる。
 (6)株式の承継を、配当を受ける権利の議決権を行使する権利を分離させることができる。
 (7)収益不動産の承継において、その不動産の相続人以外に収益を渡し続けることが可能。

財産管理や相続、事業承継、扶養等に関し、これまでの遺言では実現できなかった事が個人信託では可能となります。
特に認知症になった場合のケア等、生前の事もカバーできる点、遺産分割や事業承継が最長30年間に渡って本人の意思に基き、確実に履行できる点が遺言に比べて大きな特徴になります。


【第二部】
不動産管理会社を活用した相続対策のポイントと留意点
~不動産管理会社活用についての相談事例~

税理士法人FP総合研究所 税理士 山本 和義

1.不動産管理会社の活用法とその留意点

日本の資産家の多くが所有する資産の大半は、不動産で占められている。
そのため、相続対策を考える場合、収入と資産の分散を図るために不動産管理会社の活用が不可欠であると考えられる。しかし、基本税務の認識不足や誤解によるところから、充分に活用しきれていない事例が少ない。多く見受けられる誤解には、次のようなものがある。

(1)適正管理料の過度の逸脱
(2)不動産所有者による、管理会社の資本の大半の出資
(3)管理会社から不動産所有者への多額の給与の支払い(所得分散になっていない)
(4)「土地の無償返還に関する届出書」が必要となる場合の未提出
(5)不必要な地代の支払い
(6)借地権の課税に対する誤解
(7)消費税に対する誤解

  • 適正管理料について、同族会社である不動産管理会社への高額な管理料の支払いは税務調査において必ず否認されると考えるべきで、早急に是正する必要がある。
  • 不動産管理会社を活用して相続対策を行う場合、株主は子や孫とし、親が出資者にはならないようにする。会社の相続は株式の承継なので、事前に株主を子や孫にしておけば、相続税の問題を先送りすることができる。
  • 収入分散効果を上げるために、高収益な建物だけを管理会社に適正な時価で譲渡することが良いと考えられるが、その場合、借地権の課税関係が問題となる。不用意に認定課税を受けない様、「土地の無償返還に関する届出書」を提出することが重要である。
  • 不動産が大半の会社では、「土地保有特定会社」に該当するかどうかのチェックも不可欠である。該当する場合、土地等の占める割合を減らす方法を考える必要がある。

会社を活用した相続対策では、個人でなく会社で不動産を所有しその株式を相続させるようにすることで、一株ずつの贈与も可能となる。
また、資産の値上がりについても、自社株評価において含み益の一定額は控除され、個人が直接所有するよりも相続税評価額は低く評価される。

2.土地活用に係る建築名義の選択のポイント

相続対策としてマンション・アパートを建築する場合、誰の名義で建築するかの選択は大変重要である。

推定被相続人の名義で建築することは相続対策上、常に有利であるとはいえない。
通常、ハウスメーカーなどがマンション・アパート建築による相続税の節税効果と提案書に記載しているが、その節税効果は建築直後におけるものであり、相続発生時のものではない。
建築における将来の資金収支はプラスの物が大半であり、相続発生時が数十年先であることを考えた場合、相続発生時には家賃収入等で財産が増えていることも想定され、推定被相続人の名義にすることは必ずしも相続税対策にはならない。

推定被相続人が建築主となるケースで相続税の大きな効果が期待できるのは、建物の完成後数年内に相続が発生することが予想される場合に限られると考えられる。

そこで、相続の発生がかなり先と考えられる場合、不動産管理会社で建築することが有効であるといえる。その場合、株主を父とするか子とするか、資本金はいくらとするか、土地貸借の選択方法、などによって得られる効果が異なるので、総合的に判断する必要がある。

3.平成19年度事業承継税制改正の動向

■事業承継税制に係る関係省庁の改善要望の概要

  • 相続時生産課税制度の拡充(経済産業省)
     中小企業オーナー経営者が、自社株式を後継者である子供(経営に従事する役員となっている場合に限る)に贈与する場合、贈与者の年齢要件を緩和し、非課税枠を3,500万まで拡充する。(抜粋)
  • 種類株式の評価方法の明確化(新設)(経済産業省)
     中小企業の事業承継において活用が期待される、議決権制限株式等の種類株式について、相続税法上の評価方法を明確化する。(抜粋)
  • 非上場株式に係る事業承継税制の見直し(新設)(経済産業省)
     後継者が非上場の自社株式を保有している間は、相続税の課税を猶予(売却した場合には、その段階で課税)する等の方式により、事業を承継する者の相続税負担の軽減を図る。(抜粋)

■平成19年度事業承継税制に係る項目の実現可能性(山本氏私見)

平成19年度改正では、上記1及び2についてはなんらかの手当てがされ、改正されることが期待される。
また、3については、個人事業者との税負担のバランスや非上場の株式の保有機構などの整備が必要と考えられ、中長期的な視点で継続審議となるのではないかと考えられる。


【第三部】
土地家屋調査士から見た境界問題解決への様々な形
~不動産登記法の新しい筆界特定制度での紛争解決は...~

平塚泉土地家屋調査事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

キーワード...「法テラス 筆界特定制度 ADR」

1.土地家屋調査士とは??

土地境界確認作業の専門職で、国家資格である。
業務内容はあくまで筆界確認業務であり、所有権の確認業務ではない。また、建物については現況主義である。

2.土地の境界とは??

地番界(=筆界)は行政処分の行為で発生する不動の線で、所有権界はあくまで当事者同士の間で変動する線である。
土地境界紛争は地番界と所有権界の2種の境界の区別の曖昧性から発生する。日本の場合、登記はあくまで対抗要件取得のためのものである。

具体的な境界情報は制限があるが、例えば右図を参考に公示された101番からAを分割、100番からBを分割して交換登記をすれば、所有権境界が新しい地番境界になる。

逆に言えば、そこまでしなければ所有権境界が地番境界にはならない。

3.「筆界特定制度」とは??

概要
・主体は法務局の筆界特定登記官
・原則として当事者から申請、費用は申立人負担
・筆界調査委員の調査、意見書提出
・筆界特定登記官による特定公示
・標準処理期間の採用(約6ヶ月)

4.裁判外境界紛争解決制度(ADR)

■境界確定訴訟(司法)から筆界特定制度へ
訴訟は長期化することが多く、費用も高い。また、登記に反映されない形で終わることもある。しかも、最終的に勝った、負けたの人格的争いになってしまうことがあり、隣人関係の問題も生じてしまう。


土地紛争問題の解決にADRが機能する

■ADR(裁判外境界紛争解決制度)...代替的な紛争解決機能。
・白黒つけない話し合いが基本
・境界についてのADRは、現在のところ3タイプ考えられている。(司法・行政・民間)

5.境界紛争の解決の今後の形

境界紛争は一義的ではなく、一方に地番界の争いがあり、他方に所有権の争いがある。
紛争の中身を知り、それを解決するのに当事者同士に解決する姿勢があれば、境界紛争はなくなるかもしれない。


以上3部構成のセミナー終了後は立食パーティーとなり、オーナー様同士や、FPの先生方、当社社員との情報交換を交えながら和やかな時間を過ごしていただきました。

今後も賃貸経営者様に有意義な情報を発信し続けて参りますので、ご興味をお持ちのオーナー様は是非一度お問合せくださいませ。

株式会社 京都ライフ 今出川店

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