FPレポート~納税猶予税額の計算!?~

2009年02月20日

財産ドックセミナー番外編

納税猶予の適用を受ける場合の納税猶予税額の計算!?

 取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予税額の計算方法は、下記の方法によることとされています。

①相続税の納税猶予の適用がないものとして、通常の相続税額の計算を行い、各相続人の相続税額を算出する(経営承継相続人以外の相続人の相続税額は、この額となる。)。
②経営承継相続人以外の相続人の取得財産は不変としたうえで、経営承継相続人が、特例適用株式等(100%)のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人の相続税額と、特例適用株式等(20%)のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人の相続税額の差額を、経営承継相続人の猶予税額とする。

 なお、①により算出した経営承継相続人の相続税額からこの猶予税額を控除した額が経営承継相続人の納付税額となります。そこで、以下の設例で納税猶予税額の計算方法と納税猶予税額を確認してみます。

【設例】
 相続人は子A・子Bの2人で遺産総額3億円とする。子Aは経営承継相続人で、相続財産は2.9億円(うち1億円は納税猶予の対象となる株式等である。)であり、そのすべてについて納税猶予制度の適用を受けるものとする。子Bは経営を承継しない相続人であり、相続財産は0.1億円である。

(1)通常の方法により計算した相続税額
①課税遺産額
3億円 -(5,000万円 + 1,000万円×2人)= 2.3億円
②相続税の総額
2.3億円 × 1/2 = 1.15億円
1.15億円 × 40% - 1,700万円 = 2,900万円
2,900万円 × 2人 = 5,800万円
③ 各人の相続税額
A 5,800万円 × 2.9億円 ÷ 3億円 ≒ 5,607万円
B 5,800万円 × 0.1億円 ÷ 3億円 ≒ 193万円

(2)Aが納税猶予の対象となる株式等のみを相続するものとして計算した場合の相続税額
① 課税遺産額
1億円 + 0.1億円 -(5,000万円 + 1,000万円 × 2人)=4,000万円
② 相続税の総額
4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
2,000万円 × 10% = 200万円
200万円 × 2人 = 400万円
③ Aの相続税額
400万円 × 1億円 ÷ 1.1億円 ≒ 364万円

(3)Aが納税猶予の対象となる株式等の20%のみを相続すると仮定して計算した相続税額
課税遺産額 2,000万円 + 1,000万円 -(5,000万円 + 1,000万円 × 2人)
 → 0円

(4)Aの納税猶予税額 (2) - (3)= 364万円

* 中小企業白書2007年度版によれば、中小企業経営者の個人資産に占める事業用資産の割合は、自社株式30.6%、事業用不動産30.7%、その他事業用資産6.8%で、事業用資産は全体の68.1%を占めています。 そのため、経営承継相続人が事業用資産をすべて相続することになっても、自社株式の割合は45%(自社株式30.6%÷事業用資産68.1%)程度になり、上記の設例のような事例が実務上最も多いと考えられます。

財産ドック機関紙フォーチュン 186号掲載


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