資産運用と防衛の実践セミナー 2010年 秋

2010年10月14日

平塚泉土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉
税理士法人 総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男
関西電力(株) 京都支店 谷口 篤
(株)ユーエムイー 代表取締役社長 内野 雅和

去る平成22年10月14日に開催されました財産ドック主催、資産運用と防衛の実践セミナーについてレポート致します。
当日は多数のオーナー様にご参加いただき、土地の境界問題や人口減少に伴う不動産経営の問題の他に、近年話題となっている太陽光発電やインターネット環境についてなど、4名の講師による講義が行われました。以下、簡単ではございますが講義内容を振り返らせていただきます。

【第一部】
土地家屋調査士から見た、最近の境界問題解決の方向と地図作成
~知っておくと損しない、地籍整備の動向~

平塚泉土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

【第二部】
人口減少化における不動産経営の勘どころ
~新しい顧客の創造を目指して~

税理士法人 総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男

【第三部】
(1)太陽光発電による固定買取制度について

関西電力(株) 京都支店 谷口 篤

(2)賃貸マンションを取り巻くインターネット環境の変化

(株)ユーエムイー 代表取締役社長 内野 雅和

【第一部】
土地家屋調査士から見た、最近の境界問題解決の方向と地図作成
~知っておくと損しない、地籍整備の動向~

平塚泉土地家屋調査士事務所 土地家屋調査士 平塚 泉

近年問題化している境界問題について、地籍調査が必要な理由とその効果、京都市の現状、また地籍調査の進め方を紹介していただきました。

最近の境界問題解決の方向

◆地籍調査が必要となる理由

  • 境界があいまいだと、土砂崩れや水害など災害後の復旧に時間がかかる
  • 土地を分筆して売ろうとしても、隣地所有者との調査など多大な費用がかかる
  • 市町村の街づくり計画などの立案が混乱することがある

◆地籍調査がもたらす効果

  • 現地復元可能な境界明示(境界紛争の未然防止)
  • 土地取引の円滑化
  • 土地資産の保全
  • 災害復旧の迅速化
  • 公共用地の管理の適正化
  • 固定資産税課税の公平性確保

京都については地籍調査がまだ全く行われていないのが現状ではありますが、2011年度から約2年をかけて出水地区(0.48平方キロメートル)においてモデル地区として実施されることが決定しました。

京都市は道路との二つの境界を確定しています。一つ目は国に定められた境界、二つ目は道路との区域境界です。これは京都市が財産が無い為個人での持出し道路が多くまだ買収出来ていないためということです。その持出し道路に関しては非課税効果があり固定資産税が掛かりません。

◆地籍調査の進め方

1.事業計画・準備
事情計画の策定・関係機構との連絡調整、住民への説明などを行い、地籍調査を始める体制をつくります。
1-2.事前立会
立会の円滑化の為、お隣同士で声を掛け合って頂き、双方ご都合の良い日に立会の上、境界にマーキングをします。
2.一筆地調査
一筆ごとの土地について、公図等の資料により調査した後、関係者立会いのもと、各筆の土地について、所有者、地番、地目、境界の調査を実施します。
3.地籍調査
図根点を設置し、段階を踏んで測量を行い、各筆ごとの面積を測量します。最近ではGPSを用い地球規模の中の位置を特定するような測量いわゆる世界測地系で行うので世界規模でいつでも測量した土地を再現することができ災害時にも役立ちます。
4.成果の検査・承認
立会を行い、承認を得ます。この際登記簿の面積と違うことが多いので承認を貰い法務局に報告します。この地籍測量により、地籍と地図と現地が一致することとなります。

実際に境界問題と発展した際の解決法について

基本的には自主的な解決は非常に難しく、書面上の確認が必要となります。 土地家屋調査士や弁護士に依頼する場合、土地調査士と弁護士でタッグを作ってやるべきであるということです。弁護士のみでは紛争のみの部分だけになってしまう可能性があり、登記簿上の処理がうまくいかないケースがあります。
また新しい解決制度である筆界特定制度での解決があります。法務局が地番と地番の境界の特定をしてくれ境界の特定をしてくれますが、所有権の範囲は特定してくれません。
国民生活センターのADR(裁判外紛争解決手続)を利用すると筆界と境界を両方解決することができます。

民間での解決が出来ない場合は調停、仲裁、裁判等での解決となります。調停の場合は相手方が交渉に乗ることが前提、仲裁の場合は仲裁人を選ぶことができない、裁判の場合は白黒はっきりつけることができます。解決手段は様々ありますが、現状がどのような状態かをはっきりとし、その手段のメリットデメリットを把握した上で手段を連携させどの方法を使うかを選んでいただくのがよいです。

ここで、解決しておきたい境界を挙げます。

1.「所有権界(排他的権利)」
人的な相手となるので恒久的にならないケースが多く、相手が変わる可能性が大きい。
2.「筆界(定義=最初に登記された境界)」
京都では明治10年頃に登記され、その後土地開発等で地籍測量が行われ登記されたもの。
3.「占有境界(民法上時効制度あり)」
京都で一番多いケースは軒と軒が連なっているケースであり片方がつぶした場合などに起こりうる。占有しているという主張が多いが元々は重なっていたケースが多く占有認識の誤解が多々ある。
4.「管理境界線(2項道路などの場合)」
路地の中の場合で2メートルのセットバックが必要な場合など。
※2メートルセットバックの誤解点...はじめに建て替えた所が道路の中心から2メートルセットバックし、向かいの家が建て直す場合は元の中心線から2メートルである。今ある道路の中心からではない。

最近の地籍整備・地図作成事業は、不動産登記法14条地図作成事業、平成地籍調査、山林地籍整備事業、区画整理事業、街区基準点事業(DID地区)官民先行型事業(DID地区)民間補助整備事業など数多くありますが、事業内容・主体によりそれぞれメリットがあり、事業の内容をよく知った上で適正な対応をし、常に土地情報を得ること、自己所有地の周りでの動向を注視することが大切です。

【第二部】
人口減少化における不動産経営の勘どころ
~新しい顧客の創造を目指して~

税理士法人 総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男

人口減少(少子高齢化)といわれてきたのはここ2、3年であります。ここで2000年を基点とした100年間を考えてみると、1950年で日本の人口は8400万人であり、2004年で一番ピークを迎え1億3千万人になり、2055年人口は8993万人になると予想されています。

これを加味し不動産の経営で考えてみると、売上は価格×数であり今後数は減っていきます。数が減ることでどのように売上を上げていくかと考えると、価値をいかにして上げていけるか、というところになります。

人口上昇時は大量生産大量購買で大丈夫でしたが、今の時代は売れ残りを起こしてしまっています。どこのマンションも同じであれば安い方に、便利な方に客はいってしまいます。他との差別化を図ることで同じ値段や少し高くても借りていただける可能性が十分考えられます。そのような時代に変化してきたことを考えます。

1.時代背景~超高齢化社会~
2055年には日本の人口は現状の3分の2程の8993万人になるという予想が出ています。その中で注目すべきは老年人口の数はほとんど変わらずに生産年齢の人口が減少していることであり、割合としては、生産年齢人口は51・1%まで減少します。また日本の人口減少を海外の顧客を捕まえて補っていくという考え方が「グローバリズム」というキーワードとしてあげられます。
2.目的に応じた不動産(賃貸住宅)経営
不動産は有効活用をしなければ何も収益を生まず、重荷となります。さらに更地の場合は固定資産税がかかるだけです。ガレージにした場合、収入はあり固定資産税も経費で落とせるようになりますが、相続の場合は更地と同じだけになります。テナントの場合は土地の評価が建物の分、評価額が借家権割合で下がりますが将来建替えの際に立退料がかかってしまいます。その上テナントの場合は普通の土地評価額だけではなく営業権があるので今までの収入より多く出さなければならない場合もあります。居住用にした場合は建物の分評価額が下がり、さらに固定資産税はテナントにしたよりも下がります。
3.不動産ポートフォリオ(財産三分法)

不動産ポートフォリオ

A.収益性が高いにも関わらず相続税負担が軽い
→建築後比較的新しい賃貸物件が建っているようなケース。借入金が他の財産の圧縮効果を生み、相続負担を少なくしている。高い利回りでキャッシュフローもよく、借入金返済後は大きな収入源となる。
B.収益性は高いが相続税もそれなりに重い
→路線価の高い地域にある商業ビルや、テナントビル、貸駐車場。立地条件のよい地域にあるこれらの物件は、収益性が高く、借入金も比較的短期間で返済できるが、それだけに相続税負担も重い。相続後、その収入で相続税を払っていけるかどうかが決め手。
C.収益性は低いが相続税負担は軽い
→市街化調整区域や路線価の低い地域で有効活用の困難な土地等、機会があれば売却。
D.収益性が低い割に相続税負担は重い
→高い路線価に面している未利用の土地や駐車場、老朽貸家等高い路線価に見合った有効活用がされていない不動産。このままだと相続人に大きな負担を負わせることになる。
4.新しい顧客創造を目指してのイノベーション経営
(ドラッカー流経営学のすすめ)
賃貸経営を取り巻く環境は構造の変化(※1.時代背景参照)に伴い、人口は減少傾向にあるにも関らず物件数は増加傾向にあります。さらに輪をかけて不況の影響で物件競争の激化と賃料の下げ合戦が勃発しています。周辺相場やライバル物件の状況を常に把握し、先手で策を講じることが重要です。
成功のポイントは「単なる住まいの供給でなく、付加価値のついた住まいづくりで差別化」をすることです。具体的に申し上げますと、高齢者専用賃貸住宅やファミリータイプ、社会人専用ワンルーム、学生専用ワンルームなど、対象別に戦略を建て直すことです。また、間取りの変更やリニューアルをすることによっても差別化することができます。
どの商売でも言えることではありますが、今まで以上に顧客目線での工夫が必要で、工夫をしてきた方が勝ち組になり、何も工夫をしなければ負け組になる可能性があります。

【第三部】
(1)太陽光発電による固定買取制度について

関西電力(株) 京都支店 谷口 篤

地球温暖化の原因となるCO2の排出量削減に大きく貢献する太陽光発電の一層の普及を図るために、平成21年11月1日より国による太陽光発電の余剰電力買取制度が始まりました。これにより、お客様が設置された太陽光発電設備でつくられた電力のうち、使わずに余った電力を、国が定める単価で関西電力が買い取ることができるようになりました。

◆余剰電力買取制度のしくみ

買い取りとご負担という仕組みになっています。

<買い取り>
お客様の太陽光発電設備でつくられた電力のうち、余剰電力(使わずに余った電力)を、電力会社が国の定める条件で買い取らせていただきます。
<ご負担>
買い取りに要した費用を、電気をお使いの全てのお客様に、電気の使用量に応じて、「太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)」としてご負担いただきます。

太陽光発電の買い取り・ご負担イメージ

買い取り単価はお客様の太陽光発電設備容量や、太陽光発電以外の自家発電設備の併設、契約内容により異なります。また契約内容に変更がない限り、買い取り開始年度に適用された単価が10年間固定で適用されます。

余剰電力買取制度においては「全員参加型」のもと、買い取りに要した費用を「太陽光発電促進付加金」(電気料金の一部)として、電気を使用になる全てのお客様に、電気の使用量に応じてご負担いただくことが国により定められています。太陽光発電促進付加金は、前年の買い取り費用の総額をもとに算定し、国の審議会である買取制度長委員会を経たうえで決定され、年度(当年4月分から翌年3月分)ごとに適用されます。そのため、太陽光発電の普及状況や買取価格によって毎年度変動いたします。


(2)賃貸マンションを取り巻くインターネット環境の変化

(株)ユーエムイー 代表取締役社長 内野 雅和

インターネットが変える 満室経営

バブル崩壊をしのぐと言われる今回の不動産不況を乗り切るために、まず現在おかれている状況を把握しなくてはなりません。少子高齢化、人口の減少による「マーケットの縮小」、可処分所得・家賃支払能力の低下による「賃料等のデフレ懸念」が現におかれている状況です。ただ手をこまねいていても何も改善しません。そこでインターネット導入がなぜ必要なのかを考えます。

インターネット利用人口(光ファイバー人口)は急増しており、今やインターネットはお年寄りも利用する時代です。 お部屋探しをされるお客様のインターネットニーズは、NTTやeo光の光ファイバーの導入がステータスとされていたのが3~4年前、インターネット無料マンションが増え始めたのが一昨年くらいから、そして、昨年夏頃からは入居者の方からインターネット無料物件を探すよう変化してきました。近い将来インターネット無料が当たり前の時代に突入する可能性も含んでいます。

実際にインターネット無料物件の入居率は全国平均の76.9%に比べ、94.7%(パナソニックテレコム調べ)、さらに97.2%(ユーエムイー調べ)と平均入居率とは20%前後の差がうまれています。入居者が決まらない時、空室が埋まらない時、家賃を下げていませんか?今こそ値下げではなく真の投資をするべきなのです。

家主様が直接、安いインターネットサービス提供会社と契約をするケースが増えていますが、個人判断は望ましくありません。粗悪な設備機材を使い、手抜き工事で儲けているケース多く、居住者とのトラブルが絶えません。また、リースを組まされたものの会社が倒産し債権だけが残りサービスがストップしてしまうというトラブルも発生しております。しっかりとした不動産会社と相談の上、決めることが大切です。


財産ドックでは時代に即した資産運用コンサルティングをオーナーの皆様にご提供させて頂いております。資産運用・相続問題等について悩みのある方は是非ご相談ください。ゆとりのあるライフプランを各専門FPがトータル的にアドバイスさせて頂きます。宜しくお願い致します。

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