今が肝心、来年度の確定申告対策

2010年02月12日

税理士法人FP総合研究所 松原健司

今回のセミナーは税理士法人FP総合研究所ゼネラルマネージャー松原健司先生をお招きして確定申告対策と22年度の税制改正をテーマに行われました。

マンション・アパート投資における消費税還付制度が改正されます

改正の経緯

会計検査院が賃貸マンション等の取得に係る消費税の還付について、公平性が著しく損なわれていると指摘し、平成22年10月20日に「会計検査院法第36条の規定による意思表示」を行っています。

改正の目的

「賃貸マンション等の取得に係る消費税額を仕入税額控除していない事業者や消費税額の調整を行っている事業者との間で公平性が著しく損なわ」れている事態を改善させ、現行法においては合法である消費税還付の効果をなくすことによります。

調整対象固定資産の調整に該当するような改正が行われます!

【原則】
課税事業者を選択した場合には、最低2年間は課税事業者である事が強制されます。(変更無し)
【特例】
次の期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、当該取得があった課税期間を含む3年間(現行の制度では2年間)は、引き続き課税事業者である事が強制される事になります。
(1)課税事業者を選択した者の、課税事業者強制適用期間である2年間。
(2)資本金1000万円以上の新設法人につき、課税事業者強制適用期間である設立当初2年間。

現行の消費税法では課税事業者を選択した後、3年目に免税事業者または簡易課税を選択することにより、調整対象固定資産の取得に係る過大仕入控除税額の減額措置を免れることができます。
しかし、今回の改正によって(1)(2)に該当することになった場合は、免税事業者や簡易課税制度を3年間選択できなくなります。結果として3年目の調整計算を免れることができなくなり、還付金額を返還しなければならなくなります。

適用開始期間に注意が必要です!

上記(1)...平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者の、その届出書を提出した日以後開始する課税期間から適用。
上記(2)...平成22年4月1日以後設立された法人から適用となります。

平成22年1月1日から平成22年3月31日の期間中に課税事業者選択届出書を提出する事で旧法による従来の消費税還付が可能になりますので、今後建築予定がある場合には平成22年3月31日までに届出書の提出をおすすめ致します。

消費税還付成功のポイント

税制改正前の平成22年3月31日までに課税事業者選択届出書を提出した場合でも、その方の収入によって還付を受けることができるケースとできないケースがありますので確認ください。

【還付できる可能性の高い方】
初めて不動産賃貸業を開始される方・既に不動産賃貸業を開始しているが、既存の収入が駐車場収入や店舗など課税売上のみの方・新たに法人を新設して、当該法人にて建物を建築する方。

【消費税の還付を受けることが困難な方】
既に不動産賃貸業を行っており、収入の内訳が住宅家賃など非課税売上が大半を占める方

還付を受ける事が困難な方の対策

法人を新設して、法人での建築を行う・既存の不動産収入のない方での建築を検討する・既存の不動産収入のうち非課税売上を生む物件を他の名義にする(建築を誰で行うかは相続対策にも影響しますので総合的に判断が必要です)

法人設立による所得税対策

毎年の所得税が高く、法人に建物を移転して所得の分散を考えることは、累進税率を緩和することなどからも所得税対策には大変有効です。その過程で建物を法人に売却する場合においても消費税の還付を活用することができます。


相続税法改正に伴う節税対策

相続税法24条の改正

相続税法24条は、「年金受給権の評価」といわれる税制で、年金として受給する権利を相続・贈与した場合、課税対象額を年金受給総額より小さく評価するというものです。この税制が、平成22年3月末をもって事実上廃止となります。次に該当する場合には、改正案による新評価方法が取られることになります。

(1)平成22年4月1日以降に契約した定期金
(2)平成23年4月1日以後に相続・贈与が確定する場合

つまり、平成22年3月31日までに契約し、平成22年3月31日までに贈与を確定させることができれば、現行の評価方法を受けることができます。

死亡保険金を年金で取得することによる相続財産の圧縮対策

【前提条件】
(1)金融機関で年金保険に加入(最終的に終身保険に切替が可能なもの)
(2)死亡保険金は1億円(保険料は一時払で1億円)
(3)保険金を年金で受け取ることができる契約(遺族年金特約)を設定
(4)年金受給期間は20年とする
(5)契約者:父 被保険者:父 保険金受取人:子

この場合の財産評価は次の通りとなります。

一時金の評価...1億円
24条評価...1億円×40/100=4000万円
(残存期間が15年超25年以下・法定評価割合100分の40で計算)

現金1億円を相続すると1億円に対して相続税が課税されますが、上記保険契約に基く年金の受給権を相続すると4000万円に対してだけ相続税が課税され、差額6000万円の相続財産が圧縮されます。

年金(年金受給権)で子供等に贈与することによる相続対策

【前提条件】
(1)金融機関で年金保険に加入(即時に年金支給が開始するもの)
(2)年金支給総額は1億円(保険料は一時払で11億円)
(3)年金受給期間は36年とする
(4)契約者:父 被保険者:子 年金受取人:子

親が保険料を負担し子供が年金を取得した場合には、年金受取開始日に将来にわたるまでのすべての年金(いわゆる年金受給権)の贈与があったこととなります。つまり、年金が即時に発生した場合には改正前の現在において贈与があったこととなり、従来の相続税法24条の適用が可能となります。

この場合の贈与財産の評価額は下記の通りになります。

1億円×20/100=2000万円
(残存期間が35年超・法定評価割合100分の20で計算)

ここで暦年課税制度と相続時精算課税制度を比較すると

(1)暦年課税制度...(2000万円―110万円)×50%―225万円=720万円

(2)相続時精算課税制度...(2000万円―2500万円)=▲500万円→0円


小規模企業共済制度の活用とポイント

小規模企業共済制度とは、小規模企業の個人事業主又は会社の役員の方が事業をやめられたり退職された場合に、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度で、いわば経営者の退職金制度といえるものです。

(1)支払時は所得控除、退職時(死亡時)には退職金の非課税規定が活用できます。
(2)金利はそれほどではありませんが、実質的に所得税、住民税の減税額が金利と同様の効果を生みます。
(3)所得控除となるため税率が高ければ高いほど減税効果が大きくなります。
(4)中途で解約する場合には元本を割り込むケースがあります。
(5)個人と法人役員いずれも加入の可能性のある方は個人で加入したほうが有利です。


所得分散による節税対策

所得税・住民税は超過累進税率の為、所得が高くなると適用税率も高くなりますので、所得移転(所得分散)することで節税できます。
所得分散は所得税・住民税に限らず、相続税対策にもなりますので、積極的に次のポイントを取り入れていただければと思います。

【節税のポイント】
(1)青色事業専従者給与の支払による所得分散...事業主からその配偶者へ支払われる給与は経費扱いされ、配偶者への所得移転が可能になる。
(2)不動産名義を親族に変更して所得分散
(3)不動産管理会社を活用した所得分散


今回の税制改正はここで事例をあげたものはほんの一部で、オーナー様それぞれの事例に即した節税対策は、ここに記した具体的事例だけではおさまらない場合も多々あると思います。その際は弊社管理部門を含め、財産ドック事務局までご一報いただければ、お悩みの解決の糸口が見つかるかと存じますので、是非、この機会にお気軽にご利用下さいませ。

財産ドック 株式会社 事務局

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