資産運用と防衛の実践セミナー 2011年 春

2011年05月17日

(株)関西総合鑑定所 細見 正博
税理士法人総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男
積水ハウス(株) 開発部 鉄骨商品開発室 名塚 彰
福井総合法律事務所 弁護士 船橋 恵子

去る平成23年5月17日メルパルクKYOTOにて開催された、財産ドック主催、資産運用と防衛の実践セミナーについてレポート致します。
今回は、「京都から被災地へ元気を発信!」をテーマに、東北地方太平洋沖地震の不動産への影響、これからの賃貸経営等について、以下の4部の講義が行われました。

【第一部】
震災後の不動産市況

(株)関西総合鑑定所 細見 正博

【第二部】
相続税の今後の行方
~増税時代に備えて~

税理士法人総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男

【第三部】
これからの賃貸住宅
~耐震、防犯、エコ住宅、etc~

積水ハウス(株)開発部 鉄骨商品開発室 名塚 彰

【第四部】
極端な消費者保護の考え方を排除
~最高裁が敷引有効の判決・更新料裁判に与える影響は?~

福井総合法律事務所 弁護士 船橋 恵子

【第一部】
震災後の不動産市況

(株)関西総合鑑定所 細見 正博

1、平成23年地価公示にみる地価の特徴

平成22年一年間の地価は、全国的に依然として下落基調が続いたが、下落率は縮小、上昇・横バイ地点も増加。

概括
平成20年秋のリーマンショック以降、地価の下落が継続する中で、初めて東京圏、大阪圏、名古屋圏及び地方圏そろって下落率が縮小し、経済状況の不透明感は残るものの、下落基調からの転換の動きが見られた。この動きは地方圏よりも大都市圏で、また、商業地よりも住宅地において顕著であるが、商業地においても地価の下落率が縮小し、住宅地の下落率と大差のない状況に近づいている。

【住宅地】

  • ◆住宅ローン減税、低金利、贈与税非課税枠拡大等の政策効果や住宅の値ごろ感の醸成により、住宅地への需要が高まり、住宅地の地価は下落基調からの転換の動きが見られた。
  • ◆大都市圏においては、マンション販売の回復傾向が顕著であり、特に都心部では、マンションの素地取得が活発になっている地域も見られ、開発余力の高い地域では地価上昇に繋がっている。また人気の高い住宅地を中心に、値ごろ感の醸成された地域において、戸建住宅等についての根強い需要から、面的に上昇や横ばい地点が現れたエリアも見られる。
  • ◆地方圏においても、選好性の高い住宅地等における需要の顕在化や、医療や福祉などを重視したまちづくり、交通インフラや基盤整備の効果等により、地価下落に歯止めがかかった地域も散見されるものの、人口減少等の構造的な要因により、波及の程度は弱い。

【商業地】

  • ◆都市部を中心にオフィス賃貸市場の賃料調整、企業収益の回復、資金調達環境の好転、リート株の回復等を背景に、国内外からの投資も見られたこと等から、地価の下落幅が大幅に縮小した地域が見られるようになった。経済状況の不透明感も残り、オフィスエリア全般では、依然空室率が高止まりの傾向であるが、大型、築浅ビルへの集約移転等により、優良物件が競争力を向上させ、需要が顕在化するケースも見られる。
    都市部の一部の地域では、高度利用のできる商業地域にマンションが立地する傾向がみられ、マンション販売の好調を反映して、地価の上昇につながらケースも見られる。
  • ◆地方圏においても、下落率の縮小傾向が見られ、特に、鉄道の開業、延伸に関連する地域等における地価上昇の動きも散見されるが、依然低調な賃貸市場、人口減少等に伴う需要減、地域のキーテナントの撤退、郊外の大型店による中心市街地の衰退等により、下落幅の縮小度合いは小さい。
  • ◆都市、地方を通じていえることではあるが、オフィス系、店舗系ともに、立地、規模等による二極化傾向や個別化傾向が強まっている。

2、東日本大震災による日本経済への影響

東北三県の被害額は政府試算で16兆円~25兆円とされ、日本経済に与える影響は甚大である。さらに東北には大手メーカの工場が数多く存在し、その多くの工場が被災した。中には世界トップシェアを誇る工場もあり、世界経済への影響も心配される。
復興を急ぐ声が叫ばれる中、阪神大震災時は経済的には3年実質的には5年程度かかった。今回はそれより長引く可能性は否定できない。

3.消費者の不動産に対する意識の変化

今回の地震でタワーマンション等、高級マンションは倒壊はしなかったものの、インフラが全て機能しなくなった。そのため戸建住宅や低層集合住宅への注目が高まりつつある。
大規模な津波が沿岸部を襲ったことから、近年人気のあったウォーターフロントから高台への需要が増えるであろう。
今後数十年以内に発生すると予想される東南海地震への対策が急がれる。


【第二部】
相続税の今後の行方
~増税時代に備えて~

税理士法人総合経営 公認会計士 長谷川 佐喜男

平成22年度改正及び相続税・贈与税改正案

改正については一旦棚上げになったものの、相続税を上げて贈与税を低くすることにより、若年層への消費を活発化させることになる。

1.相続税の改正
相続税の改正は主に(1)基礎控除の引き下げ、(2)税率の見直し、(3)死亡保険金の非課税制度の見直し、(4)未成年者控除等の見直しの4点。

(1)基礎控除の引き下げ(平成23年度改正案)
非課税枠が定額分2000万円、法定相続人一人当たり400万円の縮小


(2)相続税の税率(平成23年度改正案)
相続税の税率見直しの大きなトピックは、(ア)税率の刻みが6段階から8段階にされる、(イ)最高税率が50%から55%に引き上げられるという2点。

(3)死亡保険金の非課税制度の見直し(平成23年改正案)
改正前の制度は、死亡保険金の非課税限度額は【500万円 × 法定相続人】とされていたが、改正後は【500万円 × 未成年者、障害者、相続開始直前に被相続人と生計を一としていた法定相続人の数】とされます。

(4)未成年者控除・障害者控除の見直し(平成23年度改正案)
以下のように改正されます。


2.贈与税の改正
贈与税の主な改正点は、(1)税率の変更、(2)20歳以上の受贈者の直系尊属からの贈与税率の新設、(3)相続時精算課税制度の見直しの3点。

【改定前】

(1)税率の変更、及び
(2)20歳以上の受贈者の直系尊属からの贈与税率の新設

具体的な税率は以下となります。

【改定案】

(3)相続時精算課税制度の見直し(平成23年度改正案)
今回の改正では、親の年齢制限を65歳から60歳に引き下げ、贈与を受ける対象者に20歳以上の孫を含めることとされました。


3.小規模宅地等の特例の改正(平成22年度改正)

(1)相続人等による事業や居住の継続性
改正により、評価額を軽減されるためには相続税申告期限まで、相続人等が居住を継続することが必要。

(2)宅地を共同相続する場合
例えば、居住を継続する配偶者と、居住しない子が共同相続する場合は、改正前なら、どちらにも80%の評価額軽減が適用されていたが、改正後は居住継続の配偶者にしか適用されない。

<今後の重要ポイント>

・共通番号制度の導入
全国民の番号を付与することで税金や社会保障制度を国が一元管理するもの。この制度により、納税者個々の番号から税務当局での突合せができ申告漏れも一網打尽できるだろう。

【第三部】
これからの賃貸住宅
~耐震、防犯、エコ住宅、etc.~

積水ハウス(株) 開発部 鉄骨商品開発室 名塚 彰

1、積水ハウスの賃貸住宅 【シャーメゾン】について

◆『強固な構造』
高層ビルと同じ耐震基準をみたした3階建構造システム。専用工場で高精度に制作された鉄骨は二重の防錆処理で、耐用年数をさらにアップさせている。また外壁ロッキング工法により、地震の揺れに外壁が追従し、地震時の脱落を防ぎます。一般的なカーテンウォールと違い、伸縮性のある目的がパネル割れを防止、防耐火性を守る。

◆経年美化する【環境創造】
オーナー様に、住む人に、街に、価値ある住環境を提案。人々が集い、自然と共存しながら、潤いある街並みを創り緑豊かな庭園(ガーデン)を創出。その思いを込めて、積水ハウスが提案する街並み形成型賃貸住宅。

◆住む人に選ばれ続ける【住空間の創造】
200万戸を超す住宅建築の実績と入居者ファースト発想で、選ばれ続ける賃貸住宅を提案。

(1)戸建レベルの品質
戸建住宅で培った品質が、住むほどに入居者満足を高める
(2)インテリアコーディネーション
入居者の嗜好を徹底分析したインテリアコーディネーションシステム「SHIC」
(3)ライフスタイルプラン
部屋選びにこだわる入居者の声から生まれた「ライフスタイルプラン・シリーズ」

2、賃貸住宅のトレンド

◆これから入居者が重視すること

  • (1)オーナー・入居者共にメリットがある「エコ」が競争力となる
  • (2)生活のイライラ軽減の「遮音性能」が入居者満足につながる
  • (3)安心感向上の一歩進んだ防犯性能で差別化
  • (4)健康住宅「ケミケア仕様」で子育てファミリーも安心

【第四部】
極端な消費者保護の考え方を排除!
~最高裁が敷引有効の判決・更新料裁判に与える影響は?~

福井総合法律事務所 弁護士 船橋 恵子

1、敷引き特約とは

契約終了時敷金から一定額を差引く特約

2、最高裁(平成23年3月24日付け)判決について

(1)最高裁判決にいたるまで
最高裁判決にいたるまで、敷引き特約が消費者契約法10条に違反するか否かをめぐり、結論を異にする下級審判決が相当数出ていた。

(2)最高裁事案

  • ・ 契約時期 平成18年8月
  • 当事者は会社員、貸主は個人家主
  • ・ 家賃 月額9.6万円
  • ・ 共益費 1万円
  • ・ 保証金 40万円(礼金なし)
  • ・ 更新料 9.6万円
  • 保証金から経過年数に応じて控除した額を返還(一年未満18万から5年以上34万まで、なお、通常損耗は控除額で賄う)
  • ・ 退去時期 平成20年4月
  • 保証金から21万円を控除した19万円を返還
  • 借主が、控除された21万円の返還を求めて提訴

【第一審】
原告(借主)本人訴訟、被告(貸主)は代理人選任・・・結果請求棄却(貸主勝訴)

【第二審】
原告も代理人を選任・・・控訴は棄却(貸主勝訴)

(3)判断

◆敷引特約について
「契約当事者に、別異に解すべき特段の合意等の無い限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべき」

◆消費者契約法10条違反か否かの判断のあり方
「敷引金の額について契約書に明示されている場合・・・・、賃借人は、賃料の額に加え、敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結する・・・(補修に関して)賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは、・・・(金額等をめぐる)紛争を防止する観点から、あながち不合理なものとはいえない。さらに通常損耗等の補修費用は、賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても、これを充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には、その反面において、上記補修費用が含まれないものとして、賃料の額が合意されていると見るのが相当であって、敷引特約によって、上記補修費用を二重に負担するということは出来ない」から直ちに消費者契約法10条後段要件該当性を認めることは出来ない。
また、「賃借人は、通常、自らが賃借する物件に生じる通常損耗等の補修費用の額については充分な情報を有していない上、賃貸人との交渉によって敷引特約を排除することも困難であることからすると、敷引特約は、・・・額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近隣同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど、特段の事情のない限り、消費者契約法10条後段要件に該当して無効である。」

※本件特約についての判断
「通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまでは言えない。また、本契約における賃料は月額9.6万円であって、本件敷引金の額は、賃料の2倍から3.5倍にとどまっており、原告は本件契約が更新される場合には、賃料1ヶ月分の更新料の支払い義務を負う他には礼金等他の一時金の支払い義務を負っていないことからして、高額すぎるということはできず、」結論として消費者契約法には違反しないとした。

3、最高裁判決の評価と更新料裁判に対する影響

  • ・ 敷引特約に一定の合理性があることを前提としている
  • ・ 情報力や交渉力の格差により、消費者側が一方的に不利益な負担を余儀なくされているか否か(敷引額が高額すぎないか)を具体的にみるべきとしている。
  • ・・・ 消費者契約法10条の適用について限定した判断を行っている。
  • ・ 更新料裁判の行方
  • 更新料について上告された3事件について平成23年6月10日に最高裁にて弁論
  • 保証金から経過年数に応じて控除した額を返還(1年未満18万から5年以上34万まで、なお、通常損耗は控除額で賄う)
  • ・・・ 3事件を一括して上告受理していることからすれば、消費者契約法10条との関係について、なんらかの統一的な且つ一般的な判断がなされる可能性は高い。


今回は、東日本大震災という未曾有の災害の中での開催となり、被災地域の一日も早い復興を願い、会場に義援金箱を設置させていただきました。ご協力いただいた皆様に心からお礼申し上げます。 お預かりしました義援金は、(株)アパマンショップネットワーク被災地災害対策本部を通して被災地支援に使われます。
財産ドック(株)では、皆様にとって有益な情報を提供できるよう努力してまいります。ご相談は随時受け付けておりますのでおりますので、ご質問等ございましたらご遠慮なくお問い合わせ下さい。今後とも京都ライフグループを宜しくお願い致します。

セミナーに関する疑問やご質問等がございましたら、お気軽にお問合せください。

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