FPレポート ~敷引特約 高額すぎる場合を除き有効~
2011年04月11日
財産ドックセミナー番外編
敷引特約は通常損耗の範囲内の額であれば有効 最高裁判決
平成23年3月24日、最高裁判所第一小法廷における「敷金返還等請求事件」の判決で、居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、通常損耗等の範囲内の額であれば、消費者契約法第10条に違反しないと判示しました。
従前は、下級審において敷引特約は無効とされる判決が多くあったことから、今般の最高裁判決は、居住用建物の賃貸借契約のあり方について影響が大きいと思われます。
1. 事実関係の概要
- (1)賃貸建物の概要
- 【所在地】 京都市西京区
- 【専有面積】 65.5m2
- (2)賃貸契約等の概要
- 【契約期間】 平成18年8月21日~平成20年8月20日
- 【賃料】 9.6万円
- 【保証金】 40万円
- 【敷引特約】 経過年数に応じて18万円~34万円控除
- 【更新料】 更新時に9.6万円
- 【原状回復義務】 通常損耗等については敷引金で賄う旨の規定を設けている
- 平成20年4月30日退去 → 敷引金21万円を控除し、その残額を返還した
2. 訴えの概要
建物の賃貸借においては、通常損耗等に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われるものであるのに、賃料に加えて、賃借人に通常損耗等の補修費用を負担させる特約は、賃借人に二重の負担を負わせる不合理な特約であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である。
3. 判決の要旨
消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情がない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件特約は、契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金から控除するというものであって、本件敷引金の額が、契約の経過年数や本件建物の場所、専有面積等に照らし、本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。また、本件契約における賃料は月額9.6万円であって、本件敷引金の額は、上記経過年数に応じて上記金額の2倍ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて、本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。
そうすると、本件敷引金の額が高額過ぎると評価することはできず、本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。
上記のような敷引特約の有効性を争った事案以外にも、更新料の有効・無効を争う裁判など、賃貸オーナーと入居者との間で発生したトラブルが続々と世間をにぎわせています。
特に、賃貸マンション等の更新料を徴収する契約が消費者契約法に違反するかどうかが争われている件においては判決の行方が注目されています。高裁段階の判断が分かれた3件の訴訟で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は、借主と貸主側の双方から意見を聞く弁論を2011年6月10日に一括して行うことを決め、弁論を経て判決で統一判断を示すことになる予定です。
時代の経過と共に賃貸経営も変化を求められてきています。
オーナー様も賃貸経営者としての意識を持ち、積極的に賃貸経営に取り組むという姿勢が、今後の賃貸経営においてとりわけ重要となってくるのではないでしょうか。
財産ドック機関紙フォーチュン 211号掲載
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