知っておきたい収益物件の利回りについて

2011年09月15日

(株)関西総合鑑定所 杉若 浩孝

9月度の財産ドック定例セミナーでは、マンションをお持ちのオーナー様にとって重要な「収益物件の利回り」についてのセミナーを行いました。ともすると誤解されがちな不動産の「利回り」について、基礎的な定義から、知って得する高度な専門知識まで、不動産鑑定士の杉若浩孝先生をお迎えし講演いただきました。

「金利」と「利回り」の違い

金利は所与(与えられるもの、利子÷額面)であるのに対し、利回りは可変です。
同じリスクならば利回りの高い金融資産を選択することが重要です。収益物件の場合には利回りを向上・改善させることが重要になってきます。
また、不動産の利回りを理解しておかなければならない理由として、以下のような点が上げられます。

  • 収益を生む資産は不動産だけではない。(不動産の特徴として、たとえ収益を生まなくても持っているだけで税金(固都税)が課される。)
  • 他の金融資産との比較が重要。
  • 収益物件の価値の目安になる。
  • 不動産の利回りと不動産投資の利回りは違う。

不動産の利回り
~「NOI利回り」と「NCF利回り」~

代表的な利回りとして、最近の経済誌などでも頻出している「NOI利回り」「NCF利回り」があげられます。

◆NOI利回り

「NOI」とは「Net Operating Income」の略で、直訳すると「純利益」となり、不動産から得られる総収入から運営費を引いた額、不動産の収益性を意味します。NOIは、所有者が物件に手を加え改善したり、経費を削減したりして増加させることが重要です。

【計算式】 純収益 ÷ 物件価格

  • 純収益
    満室想定賃料-空室損失-運営費
  • 満室想定賃料
    標準的賃料水準による満室賃料

◆NCF利回り

「NCF」とは、「Net Cash Flow」の略で、NOI(純収益)に、敷金等の一時金運用益を加え、資本的支出を控除したものです。資本的支出とは、物件の資産価値・将来性を高める支出(改良費・耐用年数延長ための支出)のこと。NCFは、長期的な視点で収支を把握できることが特徴です。

【計算式】 NCF ÷ 物件価格

  • NCF
    純収益(NOI)+一時金運用益-資本的支出
  • 純収益(NOI)
    潜在総収入-空室損失-運営費

【参考】表面利回り

満室を想定した年間の家賃収入の額を物件価格で割ったものです。不動産取得にかかる費用や、取得後にかかる費用は含まれていません。

【計算式】 満室想定賃料 ÷ 物件価格

整理しておきたい金融資産の利回り
~不動産以外の金融資産利回りについて~

株式

1)配当利回り:
株価に対する年間配当金の割合。
長期保有スタンスでは重要な利回りとなります。

2)総合利回り:
株式投資に対して何%の収益を生み出したか。投資の損益(収益-コスト)を投資額で割って算出します。
短期運用スタンスでは重要な利回りとなります。

  • 株式投資の収益=配当と売却益
  • 株式投資のコスト=税金と手数料

債権

  • 債権の収益÷債権価格
  • 債権の収益=年利息+償還(売却)損益

購入・売却のタイミングにより、以下の3つに分類されます。

1)応募者利回り:
新発債を償還期限まで所有した利回り

2)最終利回り:
途中購入し償還期限まで所有した利回り

3)所有期限利回り:
途中で売却した利回り

不動産投資信託
投資家から集めた資金で複数の不動産を所有し、管理・運営を行い、そこから生じる賃料や売却益を投資家に配当します。投資家のメリットは実際に物件を購入することなく、Sクラス・Aクラスの運用が可能になります。日本では2000年11月に施行され改正投資信託法により不動産を運用対象とする投資信託が認可しました。利回りに関しては株式と同様の解釈となります。

不動産投資と借入金
~不動産の利回りと不動産投資の利回りは違う~

不動産の利回りと不動産投資の利回りは違います。NOI利回りやNCF利回りは、借入金を考慮しません。それは不動産そのものの収益性をみるためです。対して投資する場合には借入れしているケースが多いため、借入を考慮した場合の分析も必要になります。
不動産投資における利回りの算出として重要となってくるのが、自己資金利回り(レバレッジ効果)と、安全性分析(DSCR)です。

◆自己資金利回り(レバレッジ効果)

同じ収益物件(NOI利回り10%)でも、借入の割合により自己資金利回りが異なりますので、不動産の利回りは不動産投資利回りではありません。
不動産投資では、不動産の利回りであるNOI利回りが元利均等償還率を上回るかどうか、つまりレバレッジ効果が重要になります。
(不動産投資の利回り>不動産の利回り)

◆不動産投資の安全性分析(DSCR)

借入金返済の安全性(収益で借り入れをカバーできるか)を見る為の指標です。
金融機関が重視するDSCRは1.2以上といわれています。

【計算式】 純収益÷元利返済額


今回のセミナーのポイントであった「NOI利回り」と「NCF利回り」の算出方法をご理解いただきますことで、所有されているマンションの資産価値の把握に、また土地や建物のご購入を検討される際には、不動産広告チラシなどにみられる表面利回りに惑わされることなく、より正確な物件の査定・収支計算にお役立ていただけると存じます。

株式会社 京都ライフ 西院店

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