境界をめぐる紛争に終止符!?

2012年02月13日

平塚泉土地家屋調査士事務所 平塚 泉

平成24年2月13日、京都ライフ本社会議室にて、土地家屋調査士の平塚泉先生に地図行政の現状についてご講演頂きましたので、内容をレポートさせて頂きます。

地籍調査とは

地籍調査は、国が補助し市町村が実施して土地の戸籍を再度作成することをいいます。
これらは国土の把握や災害時の対応を目的とし、また税負担を公平に保つために行われます。例えば土地が100m2と登記されていても、実際は80m2の場合もあり、また逆もしかりです。これを正確に修正することによって公平な税負担へと是正されます。 地籍調査により、境界管理における迅速な対応が可能となり土地所有者の負担を軽減したり、開発等インフラ整備の際の負担軽減にもなります。

◆地籍調査が行われていない場合のデメリット

  • ・ 土地の売買や相続などをきっかけに隣人との間で境界争いが発生した場合、土地取引や相続に支障が生じる。
  • ・ 水道、道路などのインフラを整備する公共事業において、境界確認や用地取得に多大な期間と費用を要しその進捗に支障が生じる。

地籍調査の役割と現状

◆地図の主題性

地図の主題性は以下のようなものであるといえます。

  • ・ 土地の境界を示すもの
  • ・ 地番と地番の関係を示すもの
  • ・ 官有地と民有地を示すもの
  • ・ 土地の所有者、大きさを示すもの
  • ・ 課税の基礎として示すもの
  • ・ 所有権の範囲を示すもの

現在、政府行政機関の各省庁や部署にはそれぞれに役割をもった地図があります。法務局にある地図は、権利を公示するものであり、または安全な取引や権利の証明のためのものです。また、固定資産税課にある地図番は法務局のものとは違い権利を示すものではなく、あくまで課税を目的としたものです。さらに、区画整理事業地内の換地図は、換地計画書の一部として換地及び保留地の位置や形状を表示し整理後の町名、予定地番等を記入しています。

◆地籍調査の始まり

明治時代に行われた地租改正時の土地台帳付属地図は、いわゆる「公図」(地図に準ずる図面)の大部分を占めていますが、土地の実態と必ず一致しているものではなく、不正確なものも多くありました。そこで、土地に関する施策の計画・実施を円滑に進めるため、必要な基礎資料の整備として地籍調査の実施が求められていました。

◆地籍調査の現状

全国の地籍調査は「国土調査法」の制定された昭和26年から行われています。しかしながら、平成22年度末時点における地籍調査の進捗率は、49%と低位です。 特に、都市部(DID:人口集中地区)及び山村部(林地)において、地籍調査が進捗していません。


1. 対象面積は、全国土面積(377,880km2)から国有林及び湖沼等の公有水面を除いた面積である。
2. 宅地、農用地、林地については、DID以外の地域を分類したもの。
3. 四捨五入の関係で、合計値が合わないことがある。
4. 数値はいずれも、平成22年度末時点。(H23.3月調べ)
※DIDとは、人口集中地区(Densely Inhabited District)の略語。国勢調査において設定される人口密度が1 ha あたり 40 人以上,人口 5000 人以上の地域で,実質的な都市地域を表す。ここでは、平成12年の国勢調査をベースとしている。

地域別地籍調査の実施状況 は、地域間の進捗の差が大きくなっています。 北海道、東北、中国、四国、九州の各地方では調査が比較的進んでいますが、 関東、中部、北陸、近畿の各地方では大幅に遅れています。

地域別地籍調査の実施状況

京都府に関しては、これまでに宮津市・京田辺市・福知山市・綾部市・南丹市・山城町・木津町・加茂町・和束町・与謝野町が地籍調査を行ったことがありましたが、近年京都市においても地籍調査に着手することとなりました。
地籍調査の実施状況や地籍調査進捗率、地籍調査の実施地域の具体的な情報等に関しましては、国土交通省の地籍調査Webサイト「地籍調査状況マップ」よりご確認いただけます。

【参考文献・資料】
1.地籍調査Webサイト http://www.chiseki.go.jp/, 国土交通省, 2012年2月
2.京都府ホームページ http://www.pref.kyoto.jp/index.html, 京都府, 2012年2月

賢い土地境界管理
~境界紛争を発生させない為に~

◆各事業に対しての対応は?

所有の土地で事業が行われる場合、関係各所が協力して対応するのが一番です。そして、自分自身が行われる事業の正確を把握しておきましょう。
また関係書類(地図、データのコピー)は必ず残しておくようにしましょう。相続にあたって紛失している場合や、関係事業者に残っていない場合はトラブルのもとになります。

◆境界紛争を発生させないために

各事業完了後の自己管理が大切です。あくまで現地の境界線を維持管理し把握しておきましょう。事業後の再公共工事等が行われた場合には注意が必要です。各種資料(換地確定図、基準点資料等)は必ず保管及び継承していきましょう。


平成22年度末時点で進捗率7%と、全国的にも大きく遅れを取っている京都府の地籍調査ですが、行政がようやく重い腰を上げ、本格的に境界確定に着手することとなりました。しかしながら、まだまだ先は長い状況です。
賢い土地境界管理は、専門家をホームドクターのように利用し絶えず連携して紛争予防等に努めることが第一です。また何か事業があれば、出来る限り協力して関係書類等を保管し継承していくことが後々の紛争をなくすことに繋がっていくといえるでしょう。

株式会社 京都ライフ 四条店

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