転ばぬ先の相続対策、他

2012年03月12日

福井総合法律事務所 弁護士 船橋 恵子

平成24年3月12日、京都ライフ本社会議室にて開催されました財産ドッグセミナーにおきまして、弁護士の舩橋恵子先生にご講演頂きましたので、内容をレポートさせて頂きます。

転ばぬ先の相続対策
~裁判事例から考察する相続トラブル回避術~

◆相続に伴う課題

【1】財産を承継する方法
 生存中に渡すか(生前贈与の問題)、死亡時に渡すか(遺言の問題)のどちらにするのかを決定しておく

【2】生前贈与について
 経営者生存中に、事業用資産等の所有権を後継者に移転。

  • 現金や預金の場合
    • 早めに始めて、贈与税が掛からない枠(年間110万まで)を利用しながら少しずつ長期的に贈与していく。しかし連年贈与になる場合もあるので契約書等を作る等の対策をとることが必要。
    • 通帳への送金の場合は、誰から誰への贈与かわかるようにしておく。
    • 通帳と印鑑を交付し、送る相手に渡しておく方がよい。
    後半2点に関しては、税務調査対策となるので確実に行うほうが望ましい。
  • 不動産の場合
    ◆生前贈与に適した不動産とは?
    • 時価が相続税評価額より高い財産、収益物件の贈与
    • 不動産価値が上昇する見通しがあるならば先に贈与
    以上のような不動産は、相続税評価での贈与税が安くなり、贈与以後の賃料は受け取った人のものになるので、生前贈与に適しているといえる。

【3】遺言について
 遺言が無い場合は法定相続となるため、経営者死亡時に後継者に事業資産等を取得させる方法として有効。ただし遺留分の制限は受ける。撤回は自由。種類、効果などはいくつかあるが、出来れば公正証書遺言の方が望ましい。

【4】贈与に関して
 相続時清算課税制度を活用。生前贈与は2500万円までは非課税、枠を超えた部分は税率20%で相続税計算時に清算する。

【5】その他

◆借金して建物を建てるべき?
・・・例えば、1億円借金し1億円でマンションを買う場合。マンションなどの建物は固定資産税評価額に対して相続税が課される。固定資産税評価額は一般的に建築費より低くなることが多く、結果として節税となる。しかも賃貸住宅の場合は、評価が70%となり、得することもあり得る。
◆保険で相続対策ができるのか?
・・・遺産の分割対策として有用。

賃貸オーナーとして知っておきたい法規解説
~賃貸に関する諸問題より抜粋~

◆賃貸に関する諸問題

【1】更新について

◆合意更新
・・・期間満了前に、賃貸人と賃借人との間で契約を更新することを合意。更新後の契約期間は当事者により自由に定め、賃料の増減も可能。
◆契約更新の黙認
・・・合意が無くても可能であり、法律の規定によって契約を更新する。更新を望まない場合は、契約満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶通知をしなけれず(借地借家法26条1項)、拒絶通知をした場合でも、拒絶に正当な自由がなければ法廷更新となる(借地借家法28条)。正当事由がある場合で借家人が出て行かない状態を放置すると法廷更新となるので、正当な事由に基づく拒絶通知後も借家人が建物を使用している場合には速やかに異議を通知することが必要。
尚、更新後の契約内容は従前の賃貸借契約と同一条件、ただ契約期間については「期間の定めのない」ものとなる。

【2】督促規制法案について
 平成22年2月23日閣議決定され政府に提出された法案。(平成23年12月に廃案となったが、同様の法案が制定される可能性は引き続き存在する。)

◆法案の概要
(1)家賃債務保証業の登録制度(悪質業者の排除)
(2)家賃等弁済情報データベースの登録制度
(3)家賃当に関わる債権の取立に関する不当な取立行為の禁止
◆具体的な禁止行為
面会・文書送付・張り紙・電話等・手法を問わず人を威圧すること・借主関係者に対する威圧・人の私生活または業務の平穏を害するような言動

<例>
  • ドアロックの変更-契約書で合意していても不可
  • 動産持出-賃借人からの申し出があれば可能。ただし、処分時の承諾が必要(事前承諾は意味がない)。
  • 夜間取立-賃借人もしくは保証人を訪問あるいは電話をかけて同人らが拒否しているにも関わらず、その後夜間に連続して訪問または電話をかける行為(正当な理由がある場合を除く)。ちなみに、「夜間」とは10時以降になるのではと推測される。
  • 家賃などの滞納の事実を文書の貼り付け等により公表すること
  • 勤務先等借主の居宅等以外の場所に電話をかけたり訪問したりして催促すること(連絡が付かない場合などの正当な理由があれば別)。ただし自発的な承諾がある場合は可能(書面承諾をとることが必要)。
【罰則】 2年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金。または併科。
◆ 影響
可決されれば悪質な滞納者に対する督促が困難になる可能性も。
◆ 滞納者への対応、その他明け渡し対策
(1)公正証書による契約の締結。
その際、「強制執行認諾文言」をつけることが必要。
(2)早期に督促をすること。1日でも遅滞すれば督促は可能となる。
(3)最初の契約締結時に連帯保証人等、担保をとっておくこと
(4)定期建物賃貸借契約の利用も有効

株式会社 財産ドック事務局

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