路線価(入門編)

2012年09月14日

(株)関西総合鑑定所 杉若浩考

去る9月14日、不動産鑑定士 杉若浩孝氏をお招きし、「路線価(入門編)相続税路線価と地価動向について」の議題で財産ドックセミナーが行われました。

「公的評価」としての相続税路線価

【公的評価】
公的評価とは以下の4つを指し、公示区域内における土地の価格を示す為に用いられます。

  • 地価公示
  • 都道府県地価調査
  • 相続税路線価
  • 固定資産税評価

◆地価公示
 地価公示(公示価格)は、国土交通省により、全国の約2.6万地点の「標準地」の価格を公示したものです。1平方メートル当たりの価格であり、住宅地、商業地、工場地等用途ごとに標準地が選定されています。各標準地につき、2人の不動産鑑定士が評価をし、こちらも1月1日時点を基準とし毎年3月下旬に公表されます。

◆都道府県地価調査
 上記の「地価公示」で用いられる基準地価は、都道府県が選定した「基準地」の価格であり、合計約2・2万地点あります。基準地価は7月1日時点を基準にし毎年9月下旬に公表されます。
 公示価格、都道府県基準地価につきましては、国土交通省が運営している土地総合情報ライブラリーにて閲覧できます。

◆相続税路線価
 公的評価の一つとして上げられている相続税路線価は、相続税の土地評価の際の算定基準となるものであり、毎年1月1日時点を基準とし、7月上旬に国税庁から公表されます。
 土地は時価計算が原則ですが、便宜上、国税局により路線に価格が定められています。これを路線価といいます。路線価図の閲覧は、国税庁の路線価図・評価倍率表より可能です。

 相続税路線価については、全国で約36万地点の「標準宅地」が存在しています。公示価格のような特定地点だけでなく、全国の市街地のほぼ全路線の価格が公表されており、相続税の申告のみならず、価格水準の把握等のために不動産業者等も利用しています。ある意味、国民にとって最も身近な公的評価かもしれません。

相続税路線価の意義

 相続財産等には、価格が明確なものと明確でないものがあります。明確でないものの代表として不動産(土地)が挙げられます。価格が明確でなければ課税できない。そこで、相続税路線価が用いられます。

 国税庁の財産評価基本通達には路線価方式という評価方法が定められており、宅地の面する路線価を基として、宅地の奥行・距離に応じる奥行価格補正、側方路線影響加算等の画地調整により評価する方式が用いられています。
 なお、この方式による評価は、あくまでも課税の為の評価であり実際の取引とは関係有りません。

相続税路線価の仕組

 財産評価基本通達における規定として、「路線価」は宅地の価格がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定されます。
 また、路線とは、公道か私道かは関係なく「不特定多数の者の通行の用に供されている道路」のことをいいます。

【路線価が設定される際の基本となる宅地】
 路線価が設定される際の基本となる宅地は、以下の4項全ての事項に該当しなければなりません。

  • その路線のほぼ中央部にあること
  • その一連の宅地に共通している地勢にあること
  • その路線だけに接していること
  • その路線に面している宅地の標準的な開口距離及び奥行距離を有する形状であること

 公示価格や基準地価は特定の地点でしか評価されず、また地点数も必ずしも多いとはいえないので、それだけでは相続税等の納税者が利用するのに不十分な場合があります。
 そこで、全国の市街地のほぼ全部の路線について国税局が独自に「鑑定標準地」と、鑑定標準地に基づく「その他標準地」を設定し、不動産鑑定士による価格評価に基づき、なおかつ固定資産税路線価等とのバランスにも配慮して、最終的に国税局が全路線の路線価を敷設しています。

平成24年度相続税路線価から見た地価動向

 平成24年度の相続税路線価を見ると、全国約36万5千地点の標準宅地の平均路線価は前年比で2.8%下落しています。これは、4年連続の下落です。

 ただし、大都市圏である東京都は▲1.2%(前年▲2.0%)、愛知県は▲0.5%(前年▲0.8%)、大阪府は▲1.7%(前年▲3.4%)と下がってはいるものの下落幅は縮小しています。さらにその中でも墨田区曳舟駅周辺(東京スカイツリー景気)、あべのマーケットパークキューズモール周辺、名古屋駅周辺(高層ビルの建設ラッシュ予定)、九州新幹線沿線などいずれも商況の高まりが期待されるエリアに関しては路線価は上昇。

 京都市内に関しては下京区、中京区は前年並みを維持しており、下げ止まりの感があります。

相続税路線価評価と鑑定評価

 相続税法では財産は時価評価ですが、路線価方式による評価は財産評価基本通達にしたがった画一的な評価になります。この画一性により、時価を反映できない場合も有ります。
 また、相続税は自己申告であり、財産評価基本通達は国税庁内の指針のようなものなので、納税者が絶対に遵守しなければならないというものでは有りません。よって、場合によっては鑑定評価が有効になる可能性もあります。

例)鑑定評価が有効となる可能性があるケース

土壌汚染の存在が確認されている土地
→ 土壌汚染の除去費用相当額を控除できる可能性がある。
極端な法面、がけ地のある土地
→ 時価の観点から、財産評価基本通達では不十分な減額しか出来ないことを考慮できる可能性がある。
古い貸家や古くからの借地
→ 収益性が低い事を考慮できる可能性がある。

 ただし、鑑定評価で申告すれば税務署が無条件で認めるわけでは有りません。裁判事例では「財産評価基本通達では考慮できない特別な事情」がない限り、鑑定評価による申告でも否認される場合もあります。

相続税路線価評価を取り巻く状況

 現在、相続税路線価業務に約33億円の予算が費やされています。そこで、財務省予算執行調査により業務の効率化が求められています。
 具体的には、固定資産税路線価を有効活用することによる規模の縮小、評価に携わる人数の削減、納税者数と比較して過大な調査地点の削減等、路線価制度のあり方、意義を明確にすべきなどが挙げられており、今後の動向に注目されます。

【参考文献・資料】
1.土地総合情報ライブラリー 国土交通省, 2012年9月
2.路線価図・評価倍率表 http://www.rosenka.nta.go.jp/, 国税庁, 2012年9月

株式会社 京都ライフ 小倉店

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