資産運用と防衛の実践セミナー 2014年 春

2014年05月16日

資産形成コンサルタンツ株式会社 最高顧問 松葉民樹氏
税理法人総合経営 税理士 武村治寿氏
株式会社関西総合鑑定所 不動産鑑定士 杉若浩孝氏

平成26年5月16日、メルパルクKYOTOにて、財産ドック㈱主催による「第30回資産運用と防衛の実践セミナー」が開催されました。

【第一部】
これからの賃貸経営戦略

資産形成コンサルタンツ株式会社 最高顧問 松葉民樹氏

【第二部】
不動産オーナーにとっての事業継承

税理法人総合経営 税理士 武村治寿氏

【第三部】
あなたの土地、過大評価されていませんか?

株式会社関西総合鑑定所 不動産鑑定士 杉若浩孝氏

【第一部】
これからの賃貸経営戦略

資産形成コンサルタンツ株式会社 最高顧問 松葉民樹氏

第一部は、東京八王子で不動産業を営む傍ら、全国の税理士・建設業者・地主さん等と幅広く交流し、様々なノウハウを構築・実践されている松葉民樹氏を講師としてお迎えしました。
業種に偏らない柔軟かつトータルな視点で、相続対策など数多くのコンサルティング実績を残され、首都圏をはじめ全国で年間100回以上の地主さん向けの「資産形成セミナー」を行われています。平成6年から始められた「資産形成倶楽部」は、今や全国20ヶ所以上。歯に衣着せぬ講演で多くの地主様やオーナー様に好評を博しておられます。その経験から、今回もご来場頂きました皆様にとって非常に興味のあるお話となりました。

1.大増税と空室増加時代のアパート経営の極意

賃貸経営では、どうしたら入居率を上げる事が出来るか?という考え方ではなく、現在の状況をしっかりと把握することが重要になります。
まずは、しっかりと確定申告を。それが白色申告なのか、青色申告なのか。昨年と比べ経費は上がっているのか、下がっているのか。売上げはどうなのか。納税額は?課税額は?次に、申告結果について考えられる原因(空室・家賃の下落・修繕費)、またそれを解決する為の工夫(経費の洗い出し・設備や内装・外装のリフォーム)を考えていきます。これが入居率を上げるための第一歩です。
そして一番大事なのが、キャッシュフロー計算書を作成しているか?昨年と比べキャッシュフローが上がっているのか?下がっているのか?ということです。それらを全て把握・理解して初めて、何をどのようにすれば良いかが見えてくるのです。

2.空室対策と経営戦略

◆日本の世帯数の将来設計について
賃貸経営において、行き当たりばったりではなく、しっかりとしたデータや情報から先を読み取ったうえで空室対策・経営戦略を実践できているか?ということが重要です。参考にするデータの一つとして、「人口の減少」が挙げられます。2005年から2030年までに日本の一般世帯数は26万世帯少なくなるとされています。しかし、「単独世帯」「一人親と子から成る世帯」は増加すると予想されており、このことから今後は1Kから1LDKといった間取りの部屋に需要が高まりそうです。つまり、今後マンションの建設をお考えの方は、1LDKまでの間取りが最も適しているということになります。2LDKやそれ以上の間取りのマンションになると、今は良くても築年数が経ち、劣化が進んできた時に空室期間が長くなったり、大規模なリフォームをしないと客付けが難しくなってきたり、といった余分な費用が多く掛かる恐れがあるのです。

◆優良なお客様はどんなお部屋を選ばれるのか?
お部屋探しのお客様は必ずどこかに部屋を決め、入居されます。その時に「1件だけ見て決める」という方はほぼいません。仲介店から何件か紹介された中で、自分にあった条件や環境を比較し、決定されます。比較対象としては、賃料や設備や構造などがありますが、ここで気を付けないといけないのが、「単純に賃料を下げれば良いということではない」という事です。賃料を下げることは、入居者の質の低下を招き、賃料滞納の大きな要因になりえます。これではかえって心配事を増やす事になってしまいます。
時には賃料を上げてでも設備やサービスの向上を優先しないといけない事もあるのです。「どうやって部屋を埋めるか」ではなく、「どんな部屋がどんなお客様に選ばれているのか」が重要なのです。

◆より選んでもらう為には
 家賃は毎月かならずかかるもので、重要視されるお客様が多いのは事実です。しかしそれだけで決めるには至らないお客様も数多くおられます。そんなお客様には、「最新の設備が付いている」、「建物がキレイでデザイン性が高い」等の、営業社員が自信を持っておすすめできるポイントがあれば、他のマンションと差別化することができ、申し込みをもらえるチャンスが増えていきます。 そしてお金をかける事ばかりでなく、エントランスの清掃や部屋の匂いの除去など、オーナー様ご自身の工夫で他物件との差別化をはかる事もできます。加えて、お部屋探しのお客様はオーナー様が考えられているよりも、自分が住むマンションのオーナー様がどんな方なのかを気にされています。私自身もよくお客様から「オーナー様はどんな方ですか?」と質問されることがあります。そこでたとえば、オーナー様の顔写真入りのウェルカムボードを部屋に置いておくだけでも、お客様の安心感が増し、入居を前向きに考えられることも少なくありません。また、営業社員にもどんなオーナー様なのかということを認知させる事も効果的です。仲介店舗へ足を運び営業社員と話を交わす事で、「ここのオーナー様はよく店にも来てくれて、気さくに話をしてくれるような良い方ですよ」といったアピールもしやすくなります。

◆入居してもらったお客様に住み続けてもらう為に
 入居をしてもらったお客様には、恒久対策が必要になります。ここで重要なのはコミュニケーションです。具体的には、顔を見かければ挨拶をしたり、記念事にはささやかなお祝いをしたりする(年賀状やバースデーカード、結婚記念日など)、などが挙げられます。それだけでも入居期間は長くなり、家賃滞納の心配も減るといった一石二鳥の効果を発揮します。せっかく努力して入居して頂いたお客様により長く住んでもらえるように、入居された後もしっかりとしたフォローを忘れない。これが満室運営をする上でもっとも大事な事ではないでしょうか。

【第二部】
不動産オーナーにとっての事業継承

税理法人総合経営 税理士 武村治寿氏

1.事業承継とは

日本では「事業30年」と言われるように、30年経てば事業は次の世代へ引き継がれる事が多く、その方法は、「上場」、「承継」、「廃業」の3つに分けられます。 「承継」とは、子供や従業員など次の世代へ事業を引き継いでいくことで、経営者は変わるが会社は残ることを指します。この「承継」を繰り返すことで会社を存続させ続けていくことができるのです。また「承継」にも2つあり、「モノの承継」と「ココロの承継」に分けられます。

2.モノの承継

 個人で不動産を所有されている場合は、不動産が承継の対象になります。ここで1つ問題があります。2012年に可決された税制改革による、相続税の増税です。個人での相続にかかる納税額が上がった為に、承継時に多額の税負担が生じる可能性があります。 うまく承継する為には、建物を法人へ譲渡する形を取り、家族へ給与等を支払います。そうする事で、相続時の負担を軽減する事が出来ます。ここでの注意点は今の所有者が法人を設立しないことです。かならず後継者が設立しましょう。現所有者が法人を設立すると株式の相続に相続税が発生してしまいます。後継者が設立すれば株式は後継者の持ち物になるため、相続税がかかりません。 納税への対応

3.ココロの承継

 現在では多くのマンションが建ち、建てるだけで儲かるという時代は終わりました。これからはいかにして満室にしていけばよいのでしょう?その為には「申し込みをもらう為の工夫」や「情報を収集する能力」、「専門家や仲介店との連携」、「少子化問題など時代の先を読む感覚」が必要になってきます。しかしこれらは不動産を継承したからといってすぐに備わる能力ではありません。そんな時には、今まで様々な経験をされ、知識や情報をお持ちの現オーナー様から後継者の方へ引き継いでいく、教える事が重要なことになります。

【第三部】
あなたの土地、過大評価されていませんか?

株式会社関西総合鑑定所 不動産鑑定士 杉若浩孝氏

1.相続税評価の現状

―鑑定評価との関係―
 相続税法で定められている相続財産の価格は、国税庁が定める財産評価方式によって決められ、該当財産を取得した際の時価となります。この時価とは、該当財産を取得した日において、不特定多数の当事者間で取引が行われていた際の価格を指します。何年、何十年も前に取得されたモノに関しては、当然現在になると価値が変化している可能性が高くなります。そこで、不動産鑑定士が鑑定することにより、現時点での妥当な価格を出す事が必要になります。しかし、鑑定結果の価格がそのままその建物や土地の価値として認められる事は難しいのが現状です。

<鑑定評価に対する国税側のスタンス>
評価通達による評価額>時価
・・・評価通達による評価額を下回る鑑定評価が存在し、その鑑定評価が、一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは認められない。

他の鑑定評価との比較
公示価格や基準地価格の状況
近隣における取引事例などの状況
・・・評価通達による評価額が時価を上回ることが明らかであると認められることを要する。

国税の解釈では、不動産鑑定士の出した鑑定を「一応公正妥当な鑑定理論」としており、それだけでは足りないということになります。不動産鑑定士の出した鑑定の他に「他の不動産鑑定評価」も必要で、それらを比較し明らかに時価を上回るときにのみ認めるという、不動産鑑定士にとっては厳しい姿勢となっています。その他の例として、次のような判決例があります。

<鑑定評価を認めない採決例>
収益性の低い古アパートで鑑定評価を認めない採決
「本件建物は、本件宅地に係る建ぺい率や容積率を最大限まで使用しておらず、かつ、建築後40年近くも経過し、近隣相場より著しく低廉な家賃となっている。
そのような家賃に基づき算定された収益価格は、本件借地権の再有効利用の状況における適正な家賃を基礎として算定された価額ではないから、相続税法大22条に規定する時価、すなわち客観的な交換価値を表す価格とは認められない。」

他の鑑定評価との比較
公示価格や基準地価格の状況
近隣における取引事例などの状況
・・・評価通達による評価額が時価を上回ることが明らかであると認められることを要する。

この判決例は、借地上のアパートという特殊案件です。評価方式により算定される価格が時価を上回るなど、形式的な平等を貫く事により、かえって実質的な租税負担が増すという結果になっています。アパートであるにも関わらず入居率などは一切考慮せず、この場所にそのような建物が建っている方が悪い、とも取れるような判決となっています。 なぜ国税はこのような姿勢をとっているのでしょうか?以前は、鑑定士の評価額をそのまま価値として認めていました。しかし、一部の鑑定士の偏った鑑定価格により鑑定士は国税からの信用を失い、現在のような関係になってしまったのです。

では、鑑定士が必要となる局面はどんな時なのでしょうか? まず一つ目のパターンとして、相続した財産を売却したら、売却額が評価通達による評価額を下回った場合が挙げられます。この場合、時価である売却価格により申告することを検討すべきで、もし申告後の売却であれば、更正の請求を検討すべきです。ただし、売却額が国税庁の評価通達による評価額より低くなっている以上、売却価格の妥当性に関する根拠が必要と考えられます。そのために、鑑定評価を活用すると良いでしょう。

二つ目のパターンとして、相続人同士での不公平感を無くすために鑑定士を活用することがあります。評価通達による評価額と、市場における時価とで乖離が生じることはよくあります。それを把握しておらず、評価通達による評価額により遺産分割した場合、遺産分割時や遺産分割後において、相続人の間で不公平が生じる原因となる可能性があります。よって、相続税申告にかかる評価だけでなく、相続人の間での公平を担保するためにも、鑑定評価を活用すべきなのです。

財産ドック㈱では、皆様にとって有益な情報を提供できるよう努力してまいります。ご相談は随時受け付けておりますので、ご質問等ございましたらご遠慮なくお問い合わせ下さい。今後とも京都ライフグループを宜しくお願い致します。

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