資産運用と防衛の実践セミナー 2014年 秋

2014年10月03日

福井総合法律事務所 弁護士 稲田真孝氏
株式会社相続ステーション 代表取締役 代表税理士 寺西雅行氏

平成26年10月3日、メルパルクKYOTO 5階 にて財産ドック株式会社による第31回資産運用と防衛の実践セミナーが開催されました。
今回は第一部「賃貸借契約の終了にまつわるトラブルと対策」、第二部「不動産オーナーのための相続大改正の影響とその対策」をテーマに2部にわたる内容にて行われ、参加されたオーナー様方は皆様熱心に聞き入っておられました。

【第一部】
賃貸契約の終了にまつわるトラブルと対策

福井総合法律事務所 弁護士 稲田真孝氏

【第二部】
不動産オーナーのための相続大改正の影響とその対策

株式会社相続ステーション 代表取締役 代表税理士 寺西雅行氏

【第一部】
賃貸契約の終了にまつわるトラブルと対策

福井総合法律事務所 弁護士 稲田真孝氏

賃貸借契約を結ぶにあたり、賃貸借契約も、当事者の合意により成立するものであり、合意して成立した契約の内容は、原則として賃借人・賃貸人双方がお互いに守らなければなりません。

したがって、賃貸借の契約をするときには、その内容を十分に理解することが重要です。契約書をよく読まなかったために、後になってトラブルになる事例は少なくありません。契約書は貸主側で作成することが多いようですが、貸主側は契約の内容を理解してもらうことに努め、借主側は自分の希望を明確にした上で契約の内容を十分に理解して契約を締結することが重要です。

なお、賃貸借契約は、契約書面がなくても賃貸人と賃借人が口頭で合意するだけでも成立します。しかし、実際には、契約内容を明らかにしておくため、詳細な契約書が作成されていますし、宅地建物取引業者が仲介した場合には、宅地建物取引業者は契約条項を記載した書面を作成して当事者に交付することが義務付けられていますから、通常は契約書が作成されます。

近年、入居時はスムーズに事が進んでも、退去時の敷金清算、原状回復においてのトラブルが目立ちます。国土交通省から発行されているガイドラインによると、経年劣化、通常損耗に関しては「経年変化、通常の使用による損耗(自然損耗)等の修繕費用は賃料に含まれる」つまり、毎月支払っている賃料には「経年劣化、通常損耗(自然損耗)による修繕費用は含まれている」、とされていますので、例え故意、過失、善管注意義務違反等で、クロスの張替え費用を全額、借主(入居者)が負担することとなった場合でも、「経年劣化・通常損耗(自然損耗)」分を差し引いた額しか負担する義務はなく、当然、住宅(クロス・フローリングなど)の価値は年々減少していきますので、長く住めば住むほど負担割合も少なくなるのです。

平成17年12月16日の判例で
「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に記載されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃借人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。」
と判例が出ています。

経年劣化、自然損耗においての線引きはとても困難かと思います。対策としては、契約時の賃貸借契約書に明確な原状回復範囲等を記載しておくことが望ましいと思います。
残置物、つまり前の賃借人が残していった物の取扱いには、慎重にならなければなりません。

まず、スタートは、前の賃借人の物は前の賃借人が原状回復義務のために撤去しなければならないということです。残置物を残していくことを許すということは、残置物についての原状回復義務を免除していることになります。
そうすると、新しい賃借人に建物を貸した後、新賃借人が建物から出て行くとき、新賃借人には前の賃借人の残置物を撤去しなければならないという義務はないのです。新賃借人の所有物ではないのです。

では、新賃借人に前の賃借人の残置物を撤去してほしいときにはどうすればよいでしょうか。
登場人物は、賃貸人(オーナー)、前の賃借人、新賃借人の3人ですから、それぞれが合意をすればよいのです。
まず、オーナーと前の賃借人の間では、残置物を残しても構わないという合意です。これは残置物に対する原状回復義務の免除です。

次に、前の賃借人と新賃借人の間では、前の賃借人の残置物を新賃借人が引継ぐという合意です。そして、賃貸人と新賃借人の間では、残置物について新賃借人が原状回復義務(撤去義務)を負うという合意です。
これら3つの合意が必要となりますので、ご注意下さい。

最後に立退料をお話します。立退料はというのは、賃貸人から賃貸借契約を解約したり、更新を拒絶するときに正当事由の一環として出てくるものです。

ここで注意してほしいのですが、賃貸期間中の賃貸人から賃借人に対する「解約」というのは、解約する権利を契約に定めていないとそもそも賃貸人は解約することができません。単に賃貸期間のみを定めている賃貸借契約だと賃貸人からの解約はできないのです。
すなわち、借地借家法で解約には正当事由が必要というのは、解約権があるときに、解約権の行使を制限しているのですが、解約できることを契約で定めていないと、そもそも解約権がないということになり、正当事由の話までたどりつけないのです。

では、契約に解約できることを定めているときに正当事由と立退料の関係ですが、立退料はあくまでも補充的な要素です。ここで補充的という意味にはふたつの意味があります。
まず、いくら立退料を提案したとしても、補充的な要素なので立退料だけでいつでも解約が認められるということにはならないということです。もうひとつは、補充的なために立退料は賃借人に生じる損失の全てを必ずしも補償する必要はないということです。

そのような立退料ですが、これには大きく2つの算定方式があると言われています。
ひとつは実損補填方式、もうひとつは借家権価格方式です。そして、これをミックスした方式もあります。

実損補填方式は、比較的、居住用のときに採用されているようです。
この方式は、引越費、新しい物件の敷金・礼金、賃料の差額を補填するものです。差額の補填期間は2から3年が多いと言えましょうか。この期間の目安となる基準には、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」とその細則があります。

借家権価格方式は、営業用のときに採用されることが多いようです。この方式は、借家権の価格を算定し、これを立退料とするものです。単純な計算方式では土地の価額に借地権割合を掛けて、さらに借家権割合と掛けるものです。また、建物の価額にも借家権割合を掛けなければなりません。この2つの計算結果を足すのです。

借地権割合について、税務署は土地の価額のおおそよ6割としています。借地権割合は路線価表に書かれています。そして、借家権割合は3割とされています。土地の価額は、路線価が時価のおよそ8割といわれていますので、路線価を0.8で割り戻せば土地の価額の参考価額がわかります。建物の値段は固定資産税の評価額が参考になります。
このように算定される方式で低額になるものを念頭において賃借人と交渉することになります。ここから先は臨機応変にまた、交渉のテクニックも様々なものがあります。

【第二部】
不動産オーナーのための相続大改正の影響とその対策

株式会社相続ステーション 代表取締役 代表税理士 寺西雅行氏

平成27年度より相続税が改正されます。この改正内容は、増税と言える内容となっており、これまではお金持ちの税制と言われた相続税は一般の方にも関係がある税制となります。
相続税というのは財産を相続した場合、かならずかかるわけではありません。相続財産が一定金額を超えて発生することになります。その一定額内を決める基準の一つが「基礎控除」と呼ばれます。これが引き下げられるというのが今回の相続税改正において一番インパクトが大きい項目といえます。

【現行】
相続1件あたり5000万円
法定相続人1名あたり
1000万円

【2015年1月1日以降】
相続1件あたり3000万円
法定相続人1名あたり600万円

これまでは妻と子2人の相続人がいる場合、8000万円までの相続財産について相続税は非課税だったわけですが、2015年(平成27年)1月1日以降はこれが4800万円までとなるわけです。これによって、これまでであれば相続税がかからなかった方であっても、相続税がかかる可能性が高くなります。それでも数千万円という金額ですが、都市部の不動産のように評価額が高くなる資産が相続財産となった場合には課税対象となる可能性は十分にあります。

同時に考えておきたいのが「二次相続」です。夫から妻への相続はうまく行っても、そのあとの妻(母)から子の相続(二次相続)についても同時に考えておく必要があります。

相続の中で、最大の財産となることが想定される「自宅(不動産)」の扱いは難しいものです。不動産は分割が容易ではないため、相続の際などに問題となりやすいからです。

この時に、安易に不動産を共有するのはできるだけ控えるべきです。共有にすると何をするにしても所有者の合意を得る必要があるため、それをめぐってトラブルとなることもあります。仲が良かった子供同士であってもトラブルにはなります。売却をするとしても「売りたい金額」「売りたい時期」などが異なることで衝突しやすいです。

こうしたことも考えて、可能な限り共有は行わず、単独名義とするように考えておきましょう。
夫が死亡した場合は妻が単独相続することはさほど問題にならないケースが多いようですが、二次相続で子が相続する場合のことも考えて、あらかじめ遺言書などを作っておくとよいでしょう。そうした場合は自宅を相続できない方が不利になりやすいので代償金などについて考えておく必要があります。そこで有効なのはやはり「遺言書」です。

遺言書を作成する場合、民法に規定してある遺言の方式は大きく3種類あります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

この3種類のうち、自筆証書遺言、公正証書遺言が現在一般的に多く利用される方式となっています。遺言書はご自身の意思をしっかりと遺族に伝える、遺産を巡る財産トラブルを予防する、お世話になった方に財産を遺したいなど様々な目的で利用されます。それをスムーズに進めるためにも間違いなく、また揉めることのない方法を利用することが最適だと考えています。

その方法の一つである公正証書遺言は、公証役場の公証人の関与を必要とするのが特徴です。遺言者自身と遺言作成の証人となる方2名が公証役場へ赴き、公証人に遺言書の内容を伝えて、遺言書を作成します。遺言者が病気等で公証役場へ行けない場合、公証人に出張依頼することも可能です。

この方式の場合、公証人の関与がありますので、無効な遺言となる可能性が少なく、作成した遺言書は公証役場に保管されるので、紛失や内容の改ざんの恐れがありません。公正証書遺言は、公証役場の関与を必要とするため、公証役場へ支払う費用が必要となります。また、公証人と証人の面前で、遺言書の内容を伝える必要があるので、遺言書の内容を秘匿にすることはできません。作成した遺言書は公正証書となるので、自筆証書遺言のように遺言者がお亡くなりになった後、家庭裁判所の検認手続を必要としません。

このようなセミナーのほか、会場の入り口付近では、賃貸経営に役立つブースを展示し、休憩時間やセミナー終了後もたくさんの家主様で賑わっていました。
今回、残念ながらご出席頂けなかったオーナー様も是非次回の機会にご出席頂けましたら幸いです。

京都ライフ小倉店 マネージャー 種田智洋

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