賃貸経営におけるトラブル事例と解決(予防)策

2014年06月10日

弁護士法人 福井総合法律事務所 弁護士 稲田真孝氏

平成26年6月10日、アーバネックス御池ビル京都ライフ会議室にて定例セミナーが開催されました。
「賃貸経営におけるトラブル事例と解決(予防)策」というテーマで、分かりやすい!という事で好評の稲田弁護士に講師を務めていただきました。賃貸経営において避けては通れない様々なトラブル。質疑応答におきましても質問が飛び交い、大なり小なりお悩みを抱えておられる方が多く、非常に意義のあるセミナーとなりました。

以下、セミナーの内容をトラブルの多い3つの場面に分けてレポートさせていただきます。

1.賃貸借契約が終わる場面

賃貸借契約が終わる場面としては、おおまかに分けて、以下の4種類があります。

  • (1)契約期間満了時
  • (2)賃借人からの解約の申し入れ時
  • (3)賃貸人からの解約の申し入れ時
  • (4)賃貸人からの契約解除時

(1)の契約期間満了時につきましては通常、更新手続きという形になるのですが、正当な事由がない限り、賃貸人が更新を拒むことはできません。(2)は解約通知書の提出による一般的な解約になります。(民法617条の定めがあります)

トラブルが多いのは立退き等が関わる(3)、賃料の不払いやその他用法違反が関わってくる(4)になります。賃貸人からの解約の申し入れは借主を保護する観点から、借地借家法では6カ月前までに借主に対して通知する事になっています。また、アパート建て替えや取り壊し等でよくある、立退き交渉におきましては、賃料差額分の2、3年分+引越し費用が立退き料として支払われているケースが多くあります。賃貸人からの契約解除に関しては主に賃料の不払い等ルール違反の賃借人に対して行うものになります。契約解除の前に、内容証明郵便などで催告(ラストチャンスですよ!という通知)をすれば、後々裁判まで発展してしまった場合に不良入居者と争う材料として使う事が出来ます。

2.賃貸借契約を終わらせたい場面

入居中の賃借人が急死した、倒れた、逮捕された等、超高齢化社会や犯罪率増加が背景にある日本の現状を考えると、ますます多くなる場面ではないでしょうか。
まず、賃借人が死亡した場合には、相続人を探す必要があります。賃借権=遺産とみなされる為、勝手に契約を終わらす事は出来ません。相続人がいない場合は裁判所が選任する、相続財産管理人とのやりとりとなります。また、相続人が相続放棄をした場合は相続放棄申述受理証明書の提出など、手続きが非常に煩雑になります。自殺だったり、不審死だった場合には損害賠償の問題と次回募集時の説明義務の問題が出てきますが、まずは警察への通報が必要です。生活保護の方で身寄りのおられない方の場合は、区役所の担当ケースワーカーへの連絡もしておいた方が良いでしょう。
賃借人が倒れた場合は、意思能力の程度が問題になります。賃借人が交渉が出来ない程の判断力の場合は、家庭裁判所で成年後見人をつけてもらいます。(4親等以内の親族に限る)
賃借人が逮捕された場合は、当然、まずは連帯保証人へ連絡を取ります。注意していただきたいのは、室内に残っている賃借人の物品は勝手に撤去・処分すると証拠隠滅として扱われてしまう可能性があります。居室明け渡しに向けては、解約の同意が得られない場合は賃料不払いと居室明け渡しの訴えを提起する必要があります。

3.賃貸借契約中の出来事

賃貸借契約中に起こるトラブルとして、(1)賃借人がトラブルを発生させているケース、(2)賃料の減額請求が来た(賃料の増額請求をしたい)ケースなどがあります。

(1)賃借人がトラブルを発生させているケースとしましては、住居用の居室であるにも関わらず店舗用として使用している(用法違反)や無断増改築、最も多いのが近隣への迷惑行為があります。用法違反に関しましては賃借人に対して是正するよう、催告をします。是正されない場合は、契約解除の訴えを提起します。もちろん、損害がある場合には合わせて損害賠償請求を出す事も可能です。近隣への迷惑行為としては音の問題があります。音に関しては受忍限度(大きさ、質、時間帯等で)を超えているかどうかが重要になります。音の大きさに関しては市で無料貸し出しされている騒音測定器を利用すると良いでしょう。オーナーは居室を充分に使用出来る状態で貸し出す義務がある為、迷惑行為を放置すると近隣入居者が退去してしまうばかりか、逆に責任を問われる可能性もあるので、近隣入居者を巻き込み(味方につけて)対処していくのが無難です。
(2)賃料の減額請求が来た場合は、特別な理由がなければ応じる必要がありません。そもそも賃料は合意、もしくは判決で決めるもので、1、内容証明郵便の送付2、簡易裁判所による調停3、裁判という段階を踏まなければならない為、時間も費用もばかになりません。数千円の減額の為にこの手続きを踏まれる方は少ないです。賃料減額請求の予防策としてまして、賃料を減額しない旨の特約を付した定期借家契約にて契約する方法等もあります。

財産ドック(株)の定例セミナーでは皆様にとって有益な情報を提供できるよう努力してまいります。個別相談も行っておりますので、ぜひ奮ってご参加ください。

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