贈与と信託
2015年01月24日
税理士法人総合経営 税理士 武村寿治
今回のセミナーは財産ドックFPの武村先生をお招きし、「思いと資産の円満な承継」と題して贈与と信託について分かり易く講演いただきました。ご参考くださいませ。
贈与
A.贈与と相続
贈与とは、親の意思で必要な時に必要なお金を渡せ、年110万円の基礎控除や特例による非課税枠も使える。何回でも、いつでも、法定相続人でなくてもOK。また生きている間に感謝の言葉や笑顔をもらえる。
相続とは、遺言書がないと親の意思は必ずしも反映されるとはかぎらず、分け方は相続人の協議で決まる。死亡時に1度だけ。親への感謝よりも権利の主張になりがちで争族となる場合があります。
B.円満な贈与のために
トレンドの生前贈与について、特例を含めた贈与税の制度を知り、うまく活用しないと高負担となることや、やみくも贈与、もめる贈与となり円満な承継とはなりません。
(1)高負担になる贈与
贈与は合意があれば成立しますが、受け取った財産は貰った人が管理し、いつでも自由に使える状態にあることがポイント。
- 生命保険金や家屋の増改築等、みなし贈与とされると高負担になります。
- 定期贈与と認定され高負担とならない為に、最初に期間と金額を約束しない。
- 名義預金と認定され高負担とならない為に、もらった人が自分の印鑑で通帳をつくり、自分で通帳や印鑑を管理し、自分の口座として利用する。またその都度、贈与契約書を作成し、110万円を超える場合は、贈与税の申告と納税をする。
(2)やみくもな贈与
- 贈与しない方がよかった
例えば、相続時清算課税で土地が値下がったことで相続税が高くなる。教育資金贈与でも30歳まで1500万円使い切れないことで贈与税が課税されることがあります。制度に飛び付く前に吟味なさってください。 - 老後の生活資金が・・・
相続財産を減らすことにばかり目がいき、自分の財産把握が出来ていない、周りに流される、専門家に相談しない等で老後の生活資金がなくなってしまうことも。
(3)もめる贈与
- 遺留分の侵害:減殺請求訴訟に至り、揉め続けて関係破綻する。
- かたよった贈与:特定の親族に偏った贈与は「争いや不仲の種」となる。
(4)円満な贈与のために・・・
- その贈与は公平ですか?:平等より公平なのが重要。公平は納得感となる。
- その贈与は特例がないですか?:使わないと高負担。大半は手続きが必要。
- その贈与は妥当ですか?:自身のライフプランから妥当か。検討・相談必須。
信託
A.信託とは
信託とは、自身の財産を信頼できる人に預け、預けた人に目的に従ってその財産を管理・処分してもらう財産管理の仕組みをいいます。
- 商事信託:不特定多数に反復継続して受託。信託銀行など
- 民事信託(家族信託):特定の1人から1回だけ信託を受託。
B.信託の基本
- 信託の方法
信託契約、遺言信託、信託宣言(自己信託)がある。 - 遺言との比較
遺言信託は次の相続まで指定できる大きな特徴があります。 - 信託の税金
信託は原則受益者に課税となり、税務上の手当てされている為、信託を節税対策に用いることは難しい。 - 信託の特徴
信託はその特徴をいかし、様々な使い方があります。
・意思凍結機能:委託者の事情に左右されずに継続的に財産管理できる。
・転換機能:財産の所有権を管理処分権と収益支配権(受益権)に分離できる。
・財産管理機能:委託者の指図に従って、信託された財産を管理する。
C.信託の活用
- 認知症対策(意思凍結機能)
認知症・病気などで判断能力喪失された場合に成年後見制度では被後見人の財産の処分は原則不可能ですが、信託では、受託者が管理処分する為、信託契約設定時の意思どおりの財産管理ができる。 - 遺言代用信託(意思凍結機能)
遺言書では、利害関係者の同意があれば遺言書によらない分割も可能となり意思の承継が必ずしもできないが、遺言代用信託では可能となります。
◆遺言代用信託の応用:受益者を何代にも渡って指定できる。但し、受益者連続信託の信託期間は信託設定後30年の時点での受益者の次の受益者が死亡したら信託は終了する。
◆受益者連続型信託の活用例:家族信託により、一族で財産を守りたい、先妻の子供を後継に考えているケースなど - 共有のトラブル防止(転換機能)
共有不動産全体の売却や土地の利用形態の変更、建物の建築、新築物件へ建替え、不動産全体に抵当権を設定など共有者の同意が必要となり大変。信託では受託者が名義上の所有者として管理処分が可能です。 - 福祉の為の信託(財産管理機能)
配偶者が認知症を患っている、また障害をもつ子ので、生活安定の為、毎月一定額の分割払いを指定。子供に浪費癖があるので、毎月○○万円、○○○回払いと指定。小さな孫に財産を残したいので、成人するまでは少額ずつ、20歳になったら額を増やすよう指定ができます。 - 自社株対策への応用
遺言代用信託により議決権行使の指図権と受益権を分けることができます。
D.円満な承継
これからの資産承継は、「信託」の活用により次世代への円満承継することができます。但し、節税対策にはならないこと、遺留分にはかなわないことにご注意ください。
ご確認いただいて如何でしたでしょうか。各項目についての詳細やご質問、その他税務全般について具体的なご相談等がございましたらお気軽にお問合せくださいませ。FPの先生とともに家主様をしっかりとバックアップさせていただきます。
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