民泊を考える
2016年03月11日
福井・稲田総合法律事務所 弁護士 稲田 真孝氏
平成28年3月11日に京都ライフ本社会議室にて開かれました今回の定例セミナーは、弁護士の稲田先生をお招きし、今話題の「民泊を考える」と題して講演いただきました。
民泊とは
民泊は「シェアリングエコノミー(物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み)」のひとつで、ここで言う民泊とは、外国人観光客を相手に個人が住宅の空室やマンションの部屋などを有料で提供するサービスを指します。家主側からすると、空室を有効活用できたり高い利回りを期待できたりといった利点がある反面、宿泊中のマナーや入居者間のトラブルなどの問題点も浮き彫りとなってきています。
現在京都市において、2542件(1月25日現在)の登録があり、戸建は約34%、マンションは約66%となっております。1泊あたりの宿泊料は平均6000~12000円程度とのことです。都市計画法に基づく用途地域に適合しているかや、旅館業法に基づく許可の有無の確認など、京都市産業観光局では、その実態を把握する目的で現在調査中です。
民泊の問題点
民泊には戸建及び共同住宅、自己所有または賃貸借かどうかなどの違いがあり、それぞれに問題点があります。例えば、自己所有の共同マンション(分譲マンション)の場合は、管理規約や区分所有法に抵触していないかどうか、また、賃貸マンションや貸家では、賃貸借契約との関係、転貸の問題等が挙げられます。
さまざまな法律の縛りがある中で、そもそも民泊とは適法かどうかも問題視されています。
- 私法的規制の観点
- ⅰ民法
- ⅱ区分所有法
- 公法的規制の観点
- ⅰ国家戦略特別区域法
- ⅱ旅館業法
- ⅲ旅行業法
- ⅳ建築基準法
- ⅴ消防法
私法的規制の観点から、民法と区分所有法では、民泊を一時使用目的の賃貸借と位置づけています。賃貸物件を民泊として利用する場合、賃貸借契約上の貸主・借主の他に実際に民泊として利用する旅行者が登場し、借主が貸主に無断で旅行者に民泊として提供すると無断転貸の問題に発展することもあります。この場合、賃貸借契約の解除にも繋がりかねません。また、分譲マンションでは、標準管理規約があり、規約を遵守する必要があります。
公法的規制の観点から、国家戦略特別区域法13条では法令による規制の対象となります。知事の認定が必要な上、国家戦略特別区域内であることや、期間、広さや設備など様々な条件が課せられます。また、立入検査も行われます。
民泊は住む・暮らすというよりも宿泊するというイメージが大きくなります。「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と考えると今度は旅館業法に抵触する恐れがあり、実際に問題に発展しているケースもあります。宿泊料を徴収すること・社会性の有無・反復継続性の有無・生活の本拠か否かという点が旅館業法適用の判断基準となるとのことです。
民泊の現状
現状では民泊の実態はまだまだ不透明な部分が多く、旅館業法との関係で適法と言い切ることは難しいでしょう。厚生労働省による民泊サービスのあり方に関する検討会では、民泊を旅館業法上に規定されている簡易宿所として捉え、規制要件を緩和するなどの方法も模索されています。
背景には近年の旅行者の急増や数年後のオリンピックを視野に入れた宿泊施設の不足があります。民泊を推進しようとする動きがある反面、反対意見も多く出てきております。今後の動向に注目することが最も大切ですが、実際に民泊を運営されているまたは検討されているオーナーは是非とも慎重に進めていただきたいところです。
当セミナーにおきましては、さまざまなテーマについて、専門の講師をお招きし定期的に講義頂いております。さまざまなテーマで毎月開催しておりますので、ご興味のある方がおられましたら是非、最寄の営業所もしくは財産ドック事務局までお気軽にお問い合わせ下さいませ。今後とも、株式会社京都ライフ・ウインズリンク株式会社をよろしくお願い申し上げます。
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